従事する一資本の雇傭する労働量と、外国貿易に従事する等量の資本の雇傭する労働量とに、ある差異があるということは、認め得ない。
 アダム・スミスは曰く、『スコットランドの製造品をロンドンへ送りそしてイングランドの穀物及び製造品をエディンバラへ持ち帰る資本は必然的に、かかる作用をなすごとに、共に大英国の農業または製造業に用いられていた二つの英国資本に代位する。
『国内消費のための外国財貨の購買に用いられる資本は、この購買が内国産業の生産物をもってなされる時には、また、かかる作用をなすごとに、二つの異る資本に代位するが、しかし単にその中の一つが内国産業を支持するに用いられているにすぎない。英国財貨をポルトガルへ送りそしてポルトガル財貨を大英国に持ち帰る資本は、かかる作用をなすごとに、一つの英国資本に代位するにすぎず、他方はポルトガルの資本である。従って、消費物の外国貿易の囘帰が内国商業の如くに早くとも、それに用いられる資本は、その国の産業または生産労働に対して、単に半分の奨励を与えるに過ぎないであろう。』
 この議論は私には誤謬であるように思われる。けだし一つのポルトガル資本と一つの英国資本との二つの資本がスミス博士の想像している如くに使用されるとはいえ、なお内国商業に用いられるものの二倍の資本が外国貿易に用いられるからである。スコットランドは、亜麻布の製造に一千|磅《ポンド》の資本を用い、それをイングランドで絹製品の製造に用いられる同様の資本の生産物と交換する、と仮定すれば、二千|磅《ポンド》とそれに比例する労働量とが、この二国によって用いられるであろう。いまイングランドは、それが以前にスコットランドへ輸出していた絹製品に対して、ドイツからより[#「より」に傍点]多くの亜麻布を輸入し得ることを発見し、またスコットランドは、それが以前にイングランドから得ていたよりもより[#「より」に傍点]多くの絹製品をその亜麻布と引換にフランスから得ることが出来るということを発見すると仮定すれば、イングランドとスコットランドとは直ちに相互に取引することを止め、そして消費物の内国商業は消費物の外国貿易に変更されないであろうか? しかし、ドイツの資本とフランスの資本との二つの追加資本がこの取引に入り込むとはいえ、同一額のスコットランド及びイングランドの資本が引続き使用され、そしてそれはそれが内国商業に従事していた時と同一量の勤労を動かさないであろうか?
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    第二十七章 通貨及び銀行について

(一二四)通貨に関しては既に極めて多く論ぜられ来っているから、かかる主題に注意を払うものの中《うち》、偏見を有つものの他は、その真実の諸原理を知らないものはない。従って私はただ、その量及び価値を左右する一般的諸法則のあるものを瞥見《べっけん》するに止めるであろう。
 金及び銀は、すべての他の貨物と同様に、それを生産しかつ市場に齎すに必要な労働量に比例してのみ、価値を有つ。金は銀よりも約十五倍より[#「より」に傍点]高価であるが、それはそれに対する需要がより[#「より」に傍点]大であるからでもなく、また銀の供給が金のそれよりも十五倍より[#「より」に傍点]大であるからでもなくして、もっぱら、その一定量を獲得するに十五倍の労働量が必要であるからである。
 一国において用いられ得る貨幣の量はその価値に依存しなければならぬ。すなわちもし貨物の流通のために単に金のみが用いられるならば、銀(のみ――編者挿入)が同一の目的に用いられる場合に必要な量のわずかに十五分の一の量が必要とされるであろう。
 流通高は過剰になるほど豊富には決してなり得ない。けだしその価値を減少せしめることによって、同一の比例においてその分量は増加されるし、かつその価値を増加せしめることによって、その分量は減少されるからである。
 国家が貨幣を鋳造しかつ何らの造幣料も課さない間は、貨幣は、等しい量目と品位とを有つ同一金属のある他の片と、同一の価値を有つであろう。しかしもし国家が鋳造料を課すならば、鋳造された貨幣片は一般に、課せられた全造幣料だけ鋳造されない金属片の価値を超過するであろうが、それはけだし、それを獲得するに、より[#「より」に傍点]多量の労働または同じことであるがより[#「より」に傍点]多量の労働の生産物の価値を必要とするからである。
 国家のみが鋳造をする間は、この造幣料の賦課には何らの限界も有り得ない。けだし鋳貨の分量を制限すればそれは想像し得るいかなる価値にまでも高められ得るからである。
(一二五)貨幣が流通するのはこの原理による。すなわち紙幣に対する賦課の全額は造幣料と考え得よう。それは何らの内在価値も有たないが、しかもその分量の制限によって、その交換価値は等しい名
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