これを阻害されることも、ないであろう。これに反し、穀物の貨幣価格の下落の結果たる銀の真実価値の騰貴は、すべての他の貨物の貨幣価格はやや下落せしめるから、それは、このことが起った国の産業に、すべての外国市場におけるある利益を与え、ひいてはその産業を奨励しかつ増加せしめる傾向がある。しかし穀物に対する内国市場の範囲は、それが栽培される国の一般産業または穀物と引換えに与えるために他の何物かを生産する人々の数に比例しなければならない。しかしあらゆる国において、内国市場は、穀物に対する最も手近なかつ最も便利な市場であると共に、また同様の穀物に対する最も大きなかつ最も重要な市場である。従って穀物の平均貨幣価格の下落の結果たる銀の真実価値の騰貴は、穀物に対する最も大きなかつ最も重要な市場を拡張し、ひいてはその栽培を阻害することなくこれを奨励する傾向を有つものである。』
金及び銀の豊富と低廉とより生ずる穀価の騰落は、地主にとっては何でもないことであるが、それはけだしまさにアダム・スミスの述べている如くに、あらゆる種類の生産物が平等にその影響を蒙るからである。しかし穀物の相対価格の騰貴は常に地主に極めて有利である。けだし第一に、それは彼にその地代としてより[#「より」に傍点]多量の穀物を与え、そして第二に、穀物の各等量について、彼はより[#「より」に傍点]多量の貨幣に対してのみならず貨幣が購買し得るあらゆる貨物のより[#「より」に傍点]多量に対しても支配権を有つからである。
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第二十五章 植民地貿易について
(一一八)アダム・スミスは、その植民地貿易に関する考察において、最も十分に、自由貿易の利益、及び植民地が母国によりその生産物を最も高価な市場で売り、その製造品及び必要品を最も低廉な市場で買うことを妨げられるに当り蒙る不公正を説明した。彼は、あらゆる国をしてその産業の生産物をその好む時と所とにおいて自由に交換せしめることによって、世界の労働の最良の分配が齎され、かつ人類生活の必要品及び享楽品の最大量が確保されることを説明した。
彼はまた、疑いもなく全体の利益を促進するこの通商の自由はまた各特定国のそれをも促進するものであり、またヨオロッパ諸国がその各々の植民地について採用した狭隘《きょうあい》な政策は、その利益が犠牲にされる植民地と同様に母国自身にとっても有害であることを説明せんと企てた。
彼は曰く、『植民地貿易の独占は、重商主義のすべての他の下賤なかつ悪性な方策と同様に、すべての他国の産業を抑圧するが、しかし主として植民地の産業を抑圧するものであり、それがその利益のために設けられた国の産業を少しも増加せしめず、かえってこれを減少せしめるのである。』
しかしながら彼れの主題のこの部分は、彼が植民地に対するこの制度の不公正を説明している場合の如くに明瞭にかつ確然と取扱われていないのである。
(一一九)母国は時にその領有植民地に加える制限によって利得しないかどうかを、思うに、疑い得よう。例えばもし英国がフランスの植民地であるならば、フランスが織物や毛織布やまたはその他の貨物の輸出に対して英国の支払う重い奨励金によって利得することを誰が疑い得よう? 奨励金の問題を検討するに当って、穀物が我国において一クヲタアにつき四|磅《ポンド》であると仮定して、吾々は、英国で一クヲタアにつき一〇シリングの奨励金が輸出に与えられるならば、穀物はフランスでは三|磅《ポンド》一〇シリングに下落すべきことを知った。さてもし穀物がフランスで以前に一クヲタアにつき三|磅《ポンド》一五シリングであったならば、フランスの消費者はすべての輸入穀物に対し一クヲタアにつき五シリングだけ利得したであろう。もしフランスにおける穀物の自然価格が以前に四|磅《ポンド》であったならば、彼らは一クヲタアにつき一〇シリングという奨励金の全額を利得したであろう。フランスはかくの如く英国の蒙る損失だけ利得するであろう。すなわちフランスは英国が失ったものの単に一部分を利得するに過ぎぬのではなく、その全部を利得するのである。
しかしながら輸出奨励金は内国政策の一方策であって、母国によっては容易には課せられ得るものではないと言われるかもしれない。
もしジャメイカ及びオランダが各々生産する貨物を、英国の仲介なしに交換するのが、両国の利益に適合するならば、オランダとジャメイカの両国がこの交換を妨げられるために両国の利益が害されるべきことは全く確実ではある。しかしジャメイカがその財貨を英国に送り、そしてそこでそれをオランダの財貨と交換せざるを得ないならば、英国の資本または英国代理店が、しからざればそれが従事しなかった職業に用いられるであろう。それは、英国ではなくオランダ及びジ
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