れの真実の境遇は、たとえ悪化しないとしても、決して改善されない。彼はより[#「より」に傍点]高い利潤率を得るけれども、彼は国の土地及び労働の生産物のより[#「より」に傍点]多量を支配し得ない。穀物の価値の下落が自然的原因によって齎される時には、それは他の貨物の騰貴によって相殺されないが、これに反して、それはその製造に入り込む粗生原料品が下落するから下落するのである。しかし穀物の下落が人為的手段によって惹起される時には、それは常に何らかの他の貨物の価値の真実の騰貴によって相殺され、従ってもし穀物がより[#「より」に傍点]低廉に買われるならば、他の貨物はより[#「より」に傍点]高価に買われるのである。
かくてこのことは、必要品に対する租税は労賃を高め利潤率を低める故にそれによっては何ら特別の不利益が生じないことの、もう一つの証拠である。もちろん利潤は下落するが、しかしそれは単に労働者の租税分担額に等しいのみであり、この租税負担額はとにかく、彼れの雇傭者か、または労働者の仕事の生産物の消費者かによって、支払われなければならないのである。雇傭者の収入から年々五〇|磅《ポンド》が控除されようと、または彼が消費する貨物の価格が五〇|磅《ポンド》高められようと、それは彼または社会に対し、すべての他の階級に平等に影響すべき影響以外のいかなる影響をも及ぼし得ない。もしその貨物の価格がそれだけ高められるならば、吝嗇家は消費しないことによって租税を避け得よう。もしそれだけが間接にあらゆる者の収入から控除されるならば、彼れは公《おおや》けの負担に対するその正当な分前を支払うことを避け得ないのである。
かくて穀物の生産奨励金は、穀物を相対的に低廉にし製造品を相対的に高価にするとはいえ、国の土地及び労働の年々の生産物には何ら真実の影響を及ぼさないであろう。
(一一三)しかし今、反対の方策が採られ、貨物の生産奨励金に対する資金を供給する目的をもって、穀物から租税が徴収されたと仮定しよう。
かかる場合においては、穀物が高価となり諸貨物が低廉となるべきことは明かである。もしも労働者が穀物の高価なることによって損害を受けるだけを諸貨物の廉価なることによって利得するならば、労働は引続き同一価格にあるであろうが、しかしもし彼がそうならないならば、労賃は騰貴して利潤は下落し、他方貨幣地代は引続き以前と同一であろう。利潤が下落するのは、吾々が今説明したように、この下落によって労働者の租税分担額が労働の雇傭者によって支払われるのであるからである。労賃の騰貴によって、労働者は穀物の騰貴せる価格という形で支払う所の租税に対して補償されるであろう。彼れの労賃を製造貨物には少しも支出しないことによって、彼は奨励金を少しも受取らないであろう。奨励金はすべて雇傭者によって受取られ、また租税は一部分被傭者によって支払われるであろう。労働者には、彼らに課せられたこの増加に対して、労賃の形において、補償がなされ、かくして利潤率は下落するであろう。この場合にもまた、国民的影響は何ら齎さない所の複雑な方策があるわけであろう。
この問題を考慮するに当って、吾々は故意に、外国貿易に対するかかる方策の影響を吾々の考慮の外に置いた。吾々はむしろ他国と全く商業的関係を有たない島国の場合を仮定して来た。吾々は、穀物及び諸貨物に対する国の需要は同一であろうから、この奨励金がいかなる方向を取ろうとも、資本を一つの職業から他のそれに移そうとする誘惑はないであろうということを見た。しかし、もし外国貿易がありしかもその貿易が自由であるならば、それはもはや事実ではなくなるであろう。諸貨物と穀物との相対価値を変更することによって、その自然価格に極めて有力な影響を及ぼすことによって、吾々はその自然価格が下落する貨物の輸出に有力な刺戟を与え、またその自然価格が騰貴する貨物の輸入に等しい刺戟を与えていることになるであろう、かくして、かかる財政方策は全く職業の自然分配を変更し、その結果は実に外国の利益となるが、しかしかかる不合理な政策を採用する国の破滅となるであろう。
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第二十四章 土地の地代に関するアダム・スミスの学説
(一一四)アダム・スミスは曰く、『土地の生産物の中で、その通常価格がそれを市場に齎すに用いられなければならぬ資本並びにその通常利潤を償うに足る如き部分のみが、普通市場に齎され得る。もし通常価格がこれ以上であるならば、その剰余部分は当然に土地の地代に帰属するであろう。もしそれがこれ以上でないならば[#「もしそれがこれ以上でないならば」に傍点]、その貨物は市場に齎され得てもそれは地主に何らの地代をも与え得ない[#「その貨物は市場に齎され得てもそれは地主に何らの地代をも与え得ない」
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