たために、それはもはや以前にそれが輸出された国の国産品と競争し得なくなるかもしれない。あらゆるかかる場合においては、著しき困苦とそして疑いもなくある損害を、かかる貨物の製造に従事する人々は経験するであろう。そしてこれは、啻にかかる変化の時においてのみならず、更に彼らが支配し得る資本及び労働を一つの職業から他の職業に移しつつある期間全体に亙って感ぜられるであろう。
かかる諸困難が発生したのみならず、更にその貨物が以前に輸出された国々においても、困苦は経験されるであろう。いかなる国も、輸出しない限り長く輸入することは出来ず、またいかなる国も輸入しない限り長く輸出することは出来ない。しからば、もしある国をして、外国貨物の平常量を輸入することを、永久的に妨げるある事情が起るならば、それは必然に平常輸出されていた貨物中の、あるものの製造を減少せしめるであろう。そして、同一額の資本が用いられていようから、その国の生産物の総価値はおそらくほとんど変動しないであろうとはいえ、しかもそれは同様に、豊富でかつ低廉ではないであろうし、また職業の変動によって著しい苦痛が経験されるであろう。もし一〇、〇〇〇|磅《ポンド》を、輸出向綿製品の製造に用いることによって、年々、吾々が二、〇〇〇|磅《ポンド》の価値ある絹靴下三、〇〇〇足を輸入するとし、そして外国貿易の中絶のために、吾々がこの資本を綿製品の製造から引去り、それを吾々自身靴下の製造に用いるを、余儀なくされたとしても、資本のいかなる部分も破壊されない限り、吾々は依然二、〇〇〇|磅《ポンド》の価値を有つ靴下を取得するはずである。ただし吾々は三、〇〇〇足ではなく、単に二、五〇〇足を得るに過ぎぬであろう。資本を綿工業から靴下業に移転するに当って多くの困苦が経験されるかもしれない。しかし、たとえそれが吾々の年々の生産物の分量を、減少することがあるとしても、国民財産の価値を著しく害することはないであろう(註)。
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(註)『商業は吾々をして、一貨物を、それが見出さるべき場所において取得し、それが消費せらるべき他の場所にそれを運送することを、得せしめる。従って、それは吾々に、その貨物の価値を、これらの場所の第一におけるその価格と第二におけるその価格との間の全差額だけ、増加する力を与えるものである。』セイ氏、第二巻、四五八頁。しかり、しかしいかにしてこの附加価値はそれに与えられるか? 第一に運送費を、第二に商人によってなされた資本の前貸に対する利潤を、生産費に附加することによって。その貨物の価値がより[#「より」に傍点]多くなるのは、あらゆる他の貨物がより[#「より」に傍点]多くの価値を有つに至ると同一の理由によるのであり、すなわちそれが消費者によって購買される前により[#「より」に傍点]多くの労働がその生産及び運送に投ぜられたが故に過ぎぬ。これは商業の持つ利益の一つとして挙げらるべきではない。この問題をより[#「より」に傍点]詳細に検討する時には、商業の有つ全利益は結局、それがより[#「より」に傍点]大なる価値ある物でなくより[#「より」に傍点]有用なる物をば獲得するの手段を与えることに、帰することが、見出されるであろう。
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長い平和の後の戦争の開始または長い戦争の後の平和の開始は、一般に貿易上に大きな困苦を惹起す。それは諸国のそれぞれの資本が以前に投ぜられていた職業の性質を大なる程度に変化せしめ、そして資本が新しい諸事情が最も有利ならしめた地位に落着きつつある期間内は、多くの固定資本は用いられず、おそらくは全然失われ、そして労働者は十分の職業を得ない。この困苦の期間は、大抵の人がその長く慣れ来った資本用途を棄てるに当って感ずる嫌気の念の強さに応じて、長くも短くもあるであろう。それはまたしばしば、商業界における諸国家の間に広く存在する不合理な嫉妬が惹起す制限や禁止によって、長引かされるのである。
(九三)貿易の激変から起る困苦は、しばしば、国民資本の減少や社会の退歩的状態に伴う所のそれと、誤られる。そして、これらのものを明確に区別するある標識を指示することは、おそらく困難であろう。
しかしながら、かかる困苦が戦争から平和への変化に直ちに随伴する時には、吾々はかかる原因の存在を知っているから、労働の維持のための基金が大いに害されたというよりはむしろ、その平常の通路から他に転ぜしめられたのであり、そして一時的の苦痛の後には国民は再び繁栄に向うものであると信ずるのをもって、合理的なりとするであろう。退歩的状態は常に不自然な社会状態であるということもまた記憶しなければならない。人は青年から壮年になり、次いで衰え、そして死ぬ。しかしそれは国民の発達過程で
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