ナあろう。
しかしながらこのことはポルトガルにとり単に見かけの上での利益に過ぎない、けだしその国において生産される毛織布と葡萄酒との分量の合計は減少されるであろうが、英国において生産される分量は増加されるであろうからである。貨幣は二国においてある程度においてその価値を変化するであろう。それは英国においては低められ、ポルトガルにおいては高められるであろう。貨幣で測ればポルトガルの全収入は減少し、同じ媒介物で測れば英国の全収入は増加するであろう。
かくて、ある国における製造業の改良は、世界の諸国民間の貴金属の分配を変更する傾向があるように思われる。それは、改良が行われる国における一般物価を引上げると同時に、貨物の分量を増加する傾向があるのである。
(五一)問題を簡単にするために、私は、二国間の貿易は二つの貨物――葡萄酒と毛織布――に限られるものと仮定して来た。しかし多くのかつ種々なる財貨が輸出入品表にあることは、人の知る所である。一国から貨幣を引去りそれを他国において蓄積することによって、あらゆる貨物は価格において影響を蒙り、従って貨幣の他の遥かにより[#「より」に傍点]多くの貨物の輸出に奨励が与えられ、従ってこのことは、しからざれば起るものと期待すべきほどの大なる結果が二国における貨幣価値に起るのを、妨げるであろう。
技術及び機械における改良の他に、貿易の自然的通路に常に作用しており、かつ均衡及び貨幣の相対価値を乱す所の、種々なる他の原因がある。輸出奨励金または輸入奨励金、貨物に対する新しい租税は、時にはその直接のまた他の時にはその間接の作用によって、自然的物々貿易を紊《みだ》し、かつその結果として、物価を商業の自然的通路に適応させるために貨幣を輸入しまたは輸出することを必要ならしめる。そしてこの結果は、啻に混乱原因が起った国においてのみならず、更にまたその程度は多かれ少かれ、商業界のあらゆる国においても、生み出されるのである。
このことはある程度において、異れる国において貨幣価値の異ることを説明するであろう。それは、内国貨物及び比較的小なる価値を有つものではあるが嵩高《かさだか》の貨物の価格が、他の原因とは無関係に、製造業の栄えている国においてより[#「より」に傍点]高い理由を吾々に説明するであろう。正確に同一の人口と等しい肥沃度の耕地の同一量とを有ち、また同一の農業知識を有つ、二国の中で、輸出貨物の製造により[#「より」に傍点]大なる熟練とより[#「より」に傍点]良い機械とが用いられている国においては粗生生産物の価格が最高であろう。利潤率はおそらくほとんど異らないであろう。けだし労働者の労賃または真実の報酬は両国において同一であろうからである。しかしこの労賃は粗生生産物と同様に、その技術と機械とに伴う利益によって豊富な貨幣がその財貨と交換して輸入される国においては、貨幣においてはより[#「より」に傍点]高く測られるであろう。
これら二国の中、もし一方はある質の財貨の製造に得点を有ち、そして他方はある他の質の財貨の製造に得点を有つとすれば、そのいずれにも多くの貴金属流入はないであろう。しかしもしそのいずれかの有つ得点が他方に甚しく優越するならば、この結果は避け得ないであろう。
本書の前の部分において吾々は、議論の便宜上、貨幣は常に引続き同一の価値を有つものと仮定した。吾々は今や貨幣の価値の通常の変動と全商業界に共通な変動との以外に、貨幣が特定の国において蒙る部分的変動もあることを説明しそして実際(編者註)、貨幣価値はそれが現在しかるが如くに、相対的課税に製造上の熟練に、気候や自然的産物やその他多くの原因に関する利便に、依存するものであるから、ある二国において決して同一ではないことを、説明しようと努めているのである。
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(編者註)原書に to fact とあるのは in fact の誤植であろう。
[#ここで字下げ終わり]
(五二)しかしながら、貨幣はかかる不断の変動を蒙り、従って大部分の国に共通な貨物の価格もまたかなりの相違を免れないであろうけれども、しかも貨幣の流入によっても流出によっても、利潤率には何らの結果も生み出されないであろう。資本は、流通の媒介物が増加されたからとて、増加されないであろう。もし農業者がその地主に支払う地代とその労働者に支払う労賃とが、ある国においては他国よりも二〇%だけより[#「より」に傍点]高く、またもし同時に、農業者の資本の名目価値が二〇%だけより[#「より」に傍点]多くなったとすれば、彼がその粗生生産物を二〇%だけ高く売っても、彼は正確に同一の利潤率を受取るであろう。
利潤は――これはいくら繰返しても繰返し過ぎるということはないが[#「こ
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