B
 もし機械の導入により、収入がそれに費される貨物の大部分が価値において二〇%下落するならば、私は、私の収入が二〇%だけ増加したと同様に有効に貯蓄し得るであろう。しかし一方の場合においては利潤率は静止的であり、他方の場合においてはそれは二〇%騰貴せしめられているのである――もし低廉な外国財貨の導入により、私が二〇%だけ私の支出から節約し得るならば、その結果は、機会がその生産費を引下げた場合と正確に同一であろうが、しかし利潤は騰貴しないであろう。
 従って、利潤率が騰貴するのは市場の拡張の結果ではない、たとえかかる拡張は貨物量を増加するには等しく有効であり、かつそれによって、吾々をして、労働の維持に向けられる基金、及びそれに労働が用いられる原料を増加し得しめるであろうとはいえ。吾々の享楽品が、労働のより良き分配により、また各国がその位置やその気候やその他の自然的なまたは人工的な利便のためにその生産に適当する貨物を生産することにより、かつそれを各国が他国の貨物と交換することにより、増加されることは、この享楽品が利潤率の騰貴によって増加されるのと同様に、人類の幸福にとり重要なことである。
 利潤率は労賃の下落によってにあらずんば決して騰貴し得ず、かつそれに労賃が費される必要品の下落の結果としてにあらずんば労賃の永続的下落はあり得ないということを、本書全巻を通じて証明しようというのが、私の努力であった。従ってもし、外国貿易の拡張によりまたは機械の改良によって、労働者の食物及び必要品が低減せる価格で市場に齎され得るならば、利潤は騰貴するであろう。もし、吾々自身の穀物を栽培しまたは労働者の衣服その他の必要品を製造する代りに、吾々が、そこからより[#「より」に傍点]低廉な価格でそれを得ることの出来る新市場を発見するならば、労賃は下落しそして利潤は騰貴するであろう。しかしもし、外国商業の拡張によりまたは機械の改良によって、より[#「より」に傍点]低廉な率で取得される貨物が、もっぱら富者によって消費される貨物であるならば、利潤率には何らの変動も起らないであろう。葡萄酒や天鵞絨《ビロード》や絹やその他の高価な貨物が五〇%下落しても、労賃率は影響を受けず、従って利潤は引続き変動しないであろう。
 かくて外国貿易は、それに収入が費される物の分量と種類とを増加し、そして貨物の豊富と低廉とに
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