た.そして原子の出すスペクトルの究明に着手して茲に不朽の業績を樹てたのである.それは周知の通り前記の核原子模型に Planck の作用量子の假定を適用する事により,古典論では説明の付かなかつた水素の原子スペクトルを理論的に解いたのである.これは雜誌 Phil. Mag. 1913年7〜11月號 (5)(6)(7)[#「(5)(6)(7)」は上付き小文字] に3囘に亙つて發表せられて居る.其骨子はよく知られて居る通り古典論では律し得ない二つの基礎假定*[#「*」は上付き小文字]にある.此假定は今日の量子論に於ても結果として其儘殘るものである.
此 Bohr の原子論に就いて述ぶべき事が二つある.第一は其當時の理論は所謂古典的量子論であつて,原子の定常状態のエネルギーを算出するには古典論を用ひるが,定常状態の規定並に定常状態の間の遷移には,古典論と相容れない上述の二假定を用ひるのであるから,理論としては一貫性を缺いだ不滿足のものである.そして此二假定も今日の量子論からは自然に導き出されるものであるから,Bohr 理論は今日の量子論の生みの親であつたといふ歴史的價値以外には,理論としては最
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