量子力學と同一結果に達することを得たのである.即ち量子力學を知らずしてこれと一致する結果を得る同等の方法を見出したのであるから,前述の通り Bohr の勘の好さが窺はれるであらう.勿論此假定は既に描像の範圍を脱して居り,又これでも定量的には不充分であつて,結局理論を定量的に進めて行く量子力學が生れたのであるが,太陽系に似た模型を用ふる Bohr の概念は正しい.そして定常状態とか定常状態間の遷移などの考へは,その儘永く殘るものである.
Bohr の理論は原子,分子の行動を表現する一方法であると云つたが,他の描像は何であるかと云へば,それは de Broglie の波動論である.即ち原子を一つの定常波として取扱ふのである.此波動も古典論に從ふ波動でないことは,Bohr 理論に於ける電子が古典論に從ふ粒子でないことと對應して居つて,de Broglie 理論に於ても定量的に問題を取扱ふには,やはり波動場の量子論を必要とするのである.此點では Bohr 理論と同樣描像の限界内にあるものであるから,その範圍を超えた問題についてはやはり無力である.
第二に Bohr 理論に就いて述ぶべきこと
前へ
次へ
全63ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
仁科 芳雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング