の復舊も綜合的に進められねばならぬ.然し一時に全體を動かすことはできないから,重點的に少數の産業が率先して範を示せば次々に凍結が溶けてくるであらう.例へば石炭とか肥料とかいふのは既にその緒についてゐるやうに思ふ.只この際特に注意すべきことは,國民の各層が,それぞれ救國の氣魄を以て立ちあがることであつて,徒らに自家の利害にのみ汲々たることは結局に於て己の損失を招くことを自覺すべき[#「自覺すべき」は底本では「自覺す べき」]である.今日の民主主義革命時代に於ては,産業組織も古い型態をその儘墨守することは許されないことである.それと同時に國民の全體から見て復舊を遲れさせるやうな變革は執るべきではない.要は各自が善意と誠意と眞實とを以て建設的の協力を盡すべきである.
それでは科學者は産業の回復するまで只手を束ねて待つべきであらうか.それでは國民の義務を果すものとはいへない.今日でも活動開始の可能な分野は直ちに仕事を始めねばならぬ.先づ第一に今日有する知識經驗を用ひて多少とも産業の回復に役立つ仕事があれば,直ちに着手すべきである.次に理論的研究は外國から文獻さへ入つてくれば研究はできる.外國
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