會議ではこの原案と修正案とを見くらべて,逐條審議していった.
 この定款改正のなかで一番大きな問題となったのは,國が新しく會員として入會する手續きに關することである.原案では,入會を申込むと自働的に入會を許すということになっておったのであるが,これに對して反對論が出て,たとえば執行委員會での2/3の多數の賛成を要するというようなこともいわれた.ずいぶん長い間の論議の結果,結局ビューローというのが,新しい申込者が入會の資格があるかどうかということを決定することになった.ビューローというのは會長と,副會長2人,それから前會長,事務總長,これに普通の國を代表する會員2人,合計7名から成立っているものである.この論議の裏には,暗默のうちにドイツの問題が考えられておったわけである.ドイツは前大戰後,入會を許されなかったが,國際政治の問題を學術會議に持込むのはよろしくないという議論がだんだん強くなって,最後にドイツも加入させるということになった.ところが,そのときにはドイツのほうから入らないということをいい出して,問題が紛糾したことがある.こんな國際政治の問題を學術會議に持ち込まないという心づかい
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