,賑やかな表通りはほとんど元の通りに回復している.これはイギリスの底力のある經濟と文化によるのであると感じた.要するに何代も世代を重ねて蓄積せられた文化と富の結果に外ならないと思う.
往復の飛行機をふくめて3週間の旅行であったから,私の觀察はほとんど皮相の感に過ぎないと思うが,私の強く感じたことは,日本はアジアの民度の低い國家の間に介在しておるが,8,000萬の人を維持するにはこの周圍の國の産業を開發して,大衆の生活程度を上げることによって,われわれの生活程度も上げてゆくというやり方より外に方法はないと感じた.これにはわれわれの科學を應用して技術を開發し,それによって資源を開拓するということが必要である.これは決して1代や2代でできることではないと思うが,わが國の經濟を維持し,われわれの生活を上げるにはこれより外に方法はないと思う.
[#地から2字上げ]〔科學研究所〕
底本:「自然 300号記念増刊 総収録 仁科芳雄・湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一」中央公論社
1971(昭和46)年3月20日発行
※底本は横組みです。
入力:山崎雅人
校正:小林 徹
2005年11月4日
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