をもつて立つことを國是とし,戰爭を廢棄したのであるから,ユネスコの趣旨はわが國是と完全に一致するのである.われわれ科學者の中には今日までただ科學の進歩を目指して進み,その社會に與える結果に對しては比較的無關心なものが多かつたのであるが,今後はその結果が如何に使用されるかについて監視する必要がある.それについてはユネスコにおいて國際的に連絡をとり,科學的成果のみならず科學者自身が戰爭に卷き込まれることを防止せねばならぬ.人類ができてから恐らく數百萬年を經たであろうが,慘虐な鬪爭を依然として續けているということは,人類の耻辱といわねばならぬ.原子爆彈の出現を契機として戰爭というものに人類が見切りをつける時ではなかろうか.
ユネスコは異なる文化人の集會であると考えては誤りであつて,これによつて戰爭を食い止めるだけの實力を養わねばならぬ.それは人類全般の協力と支持とがなければ不可能である.わが國も早晩ユネスコに參加する日が來るであろうが,それまでに民衆としての準備を整えねばならぬ.現在各地にユネスコ協力會が續々と生れつつあるのはまことに喜ばしいことである.(1948. 1. 18)〔理化學研究所〕
底本:「自然 300号記念増刊 総収録 仁科芳雄・湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一」中央公論社
1971(昭和46)年3月20日発行
※底本は横組みです。
入力:山崎雅人
校正:小林 徹
2005年11月4日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは,インターネットの図書館,青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました.入力,校正,制作にあたったのは,ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
仁科 芳雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング