ては、社会の進歩と政治の進歩とは殆んど相関せざるものゝ如くに信ずるものなきにあらず。然るに大隈伯は、絶対的政治万能主義にして、社会に於ける一切の改良及び進歩は、唯だ善政を行ふに依て之れを庶幾し得べしと信ぜり。出世間的なる宗教すらも、大隈伯の見る所にては、亦政権の援助を借りて始めて其の健全なる発達を期し得べきものゝ如し。其の理想は斯くの如くなるがゆゑに、伯は勉めて社会の各階級と交渉し、之れをして政治と同化せしめずむば止まざらむとせり。若し政治家をして一種の専門技術家たらしめば、伯の政治に於ける趣味は必らず索然として消滅せむ。何となれば伯の頭脳は総合的にして個人的ならざればなり。一言にして伯を評すれば、伯は霊魂ある新聞紙なり。伯は善く貴族と平民との思想を聯結せり、官吏と代議士との感情を聯結せり、軍人と文学者との意見を聯結せり、銀行家も、工業家も、地主も、小作人も、若しくは相場師、貿易家、鉄道屋、海運業者も、皆伯の不思議なる概括力に依て聯結せられ、毫も伯の性格に於て相扞格すべき障害あるを見ざりき。要するに伯は社会各階級の思想感情を総合して之れに政治的著色を施し、以て其の独占権を有せむとするの
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