を托するに無意義なる禅家の装姿を以てするが故に、其の一挙手一投足は殆ど常識を以て料る可からざるものあり。政治家としては或は要領を得ずとの評を免れずと雖も、新内閣の大蔵大臣としては、子を外にして其の適任者を求む可からざれば、子を狂人視せる政友会総務委員等は、到底子の位置を動かすこと能はじ。
末松謙澄男の内務大臣たるは、最適任といふ能はざれども、又大なる不可もあらず。彼れは内務に多少の経験と学識とを有し、且つ其の資性も比較上廉潔に近かきものあるを以てなり。特に彼れは伊藤侯の愛婿として殆ど侯と一身同体の個人的関係あるが故に、侯は自由に之れを指揮監督するを得可きは無論なり。則ち末松男を内務大臣たらしめたるは、是れ事実に於て、侯が自ら内務大臣を兼摂したるものと認めて可なり。政友会の一部人士は星亨氏を内務大臣たらしめむと欲して、熱心に運動したるに拘らず、侯が毫も是れに掛意せずして末松男を挙げたる良工の苦心亦想ふ可し。
金子男は心窃に農商務大臣たらしむことを期せり。彼れの実業奨励策は、何人も甚だ感服せざるものなれども、兎に角一度は農商務大臣たりしこともあり。実業上に関しては、曲りなりにも組織的意
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