や。(三十一年三月)
帰朝したる近衛公
(上)
帰朝したる近衛公は、政治社会の未定数として一般に認めらるゝ人なり※[#白ゴマ、1−3−29]従来名士の海外より帰朝するや大抵多少の新観察を齎らし来りて、国民の聴官に或る音響を感ぜしめざるなし※[#白ゴマ、1−3−29]况むや資望一代に高き近衛公に於てをや※[#白ゴマ、1−3−29]さりながら我れも人も公の帰朝に待ち設けたる問題は、公が如何なる新観察を齎し来りて国民に寄与するや否やに非ずして、如何なる新運動を今後の政治社会に試む可きや否やに在りとす。
余の記憶によれば、公の世界漫遊は、貴族教育の取調を第一の目的と為し、政治上の観察は寧ろ第二の目的なりしものゝ如し※[#白ゴマ、1−3−29]蓋し公は現に学習院長として貴族教育の重任を負ひ、而も近来専ら心血を此の方面に注ぐと共に、政治社会に於ける態度の稍々保守に傾きたるは事実に近かし※[#白ゴマ、1−3−29]公は最近数年間に起れる政変に於て、幾たびか自己の運命を試験す可き機会に遭遇したれども、公は常に淡然として之れを閑却したるに反して、独り学習院の事業に至ては、燃
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