るべし。(四十一年一月)

   活動したる河野広中

 △河野広中の奉答文事件は、一時疑問の中心と為つて、是れには黒幕があるの、進歩党の策略だのと、いろ/\揣摩憶測をするものがあつたが、追々事実が挙がるに従つて、黒幕の仕事でも何でもない、河野一己の脳中から生れた趣向であつたことが分明《わか》るやうになつた。
 △兎角政治社会には、政略とか利害とかいふものがあつて、総ての観察が色眼鏡を通して来るから、動もすると事実を曲解する傾があつて困まる。河野のやうな自ら欺くことの出来ない男が自分に何等の信念もないのに、唯だ策士の入智恵でアンな際どい芝居が演られるものでない。又た河野は正直だからといつて、一から十まで人の御先に遣はれる役目と極まつて居る道理もない。ソンな河野なら、福島事件の張本と為つて、七年も八年も監獄の飯を食ふやうな陰謀を企てない。
 △奉答文事件は、河野本来の面目を遺憾なく発揮したものである。
 △一体当世の策士といふ奴は、陰険だの狡猾だのといつても、其の策略は大抵常識から割り出したもので、万朝報の宝探しよりはモソツと判り易いやうに仕組まれて居る。河野は策士といはれる方でないから
前へ 次へ
全350ページ中257ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング