たりといふ、さりながら如何に血迷ひたる自由党にても、未だ此般の喜劇に雷同するものなかりしを以て、彼は終に陳套なる政権分配論に依りて閣下の内閣を強迫するの方針を執りたり、此方針に対して自由党総務委員が同意したるは、唯だ其の伊藤内閣をして取つて代らしむるの動機たらむことを信ずればなり、而も伊藤侯が自由党の冀望に応ずるの意思あるや否やは一個の疑問たるに於て、侯の唯一崇拝家たる伊東男は、尚ほ其の機関紙をして自由党の政権分配論に反対せしめつゝあり、伊東男が閣下の内閣を援助して現状維持を勉むるは、蓋し伊藤侯をして最も適当なる機会に於て閣下の内閣に代らしめむとするに在り、彼は此の目的を達せむとして、先づ伊藤侯に最も接近し、且つ最も馴致し易き土佐派をして自由党の中心たらしめむことを計れり、故に横浜海面埋立問題起りたる時には、窃に土佐派を使嗾して星氏を排擠せしめ、以て自由党の内容を改造せむと欲したりき、而も彼れの自由党に於けるは猶ほ星氏の自由党に於ける如く、其一挙一動は総べて自由党を惑乱して之れを自己の野心の犠牲たらしむるに在るを以て、自由党の健全なる分子は、寧ろ彼れの隠謀に反対して自由党の原形を保持し
前へ 次へ
全350ページ中232ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング