山県相公閣下、閣下と自由党との提携は、唯だ政略的関係若くは利益的関係に依りて成立したるを以て、閣下は自由党を待つに真の政府党を待つの道を以てせずして、唯だ之れを操縦して盲従せしむることを努め、自由党も亦閣下の内閣に対して真の政府党たる観念なく、唯だ其の位地を利用して政治的営私の目的を達せむことを図る、而も閣下は宣言して曰く、諸君と相倚り相助けて進取の宏謨に答へむと、嗚呼誰れか其の自ら欺くの甚しきに驚かざるものあらむや、顧ふに憲政党の分裂に付ては、伊藤侯が進歩自由両派の孰れにも多少の遺憾ありしは無論なる可しと雖も、我輩の見る所に依れば侯の最も遺憾としたるは、恐らくは憲政党内閣の破壊余りに脆くして、端なく超然内閣を再興せしむるに至りたる一時ならむ、何となれば是れ侯が閣下等の異論を排して敢て大隈板垣両伯を奏薦したる当初の意思に背きたればなり、然るに侯の直系に属する伊東巳代治男等が自由党の策士と相呼応して極力憲政党の破壊に従事したるは何ぞや、蓋し進歩派の勢力次第に膨脹して自由派の分子までも漸く進歩化するの傾向ありと認め憲政党内閣の維持一日を長うすれば独り進歩派の為めに一日の利あるを恐れて、其
前へ
次へ
全350ページ中208ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング