反動あるを予期し置かざる可からず、世には伊藤侯の心事をさま/″\に臆測するものあれども、我輩の見る所に依れば、閣下の内閣は恐らくは伊藤侯の理想に適合したる内閣に非ざると共に、自由党に於ても初めより閣下の内閣に同情を表するに非ず、我輩の所謂る政治上必然の反動とは即ち此の形勢より出現す可き第二の変局をいふなり、請ふ閣下の為に其の大略を語らむか。

      ※[#始め二重括弧、1−2−54]十五※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山県相公閣下、我輩が憲政党内閣の破壊を以て伊藤侯の本意に非ずといふは何に由るや※[#白ゴマ、1−3−29]蓋し其の理由は極めて単純明白なり、曩に憲政党の成立するや、伊藤侯は政党内閣の機運既に到りたるの現象と為し閣下等に向て政府党組織の議を詢りたるも、閣下等は狭義の憲法論を主張して之れに同意を表せず、太甚しきは憲法の一部を中止す可しと唱へたる黒田伯の如き妄論家すらありたるを以て、乃ち一は閣下等の守旧思想を打開せむが為めに、一は政局の進転を利導せむが為めに、現に憲政党の統率者たる大隈板垣両伯に向て断然政府を引渡したる伊藤侯の心事に至ては、世間何人も復た之れを疑ふ
前へ 次へ
全350ページ中203ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング