実を直言するに、閣下の内閣は、過去一年有半の間に於て、啻に政務に付て何の改善したるものなきのみならず、反つて其失政の大なる、議会開設以後の内閣中、最も顕著なるものなり、議会若し健全にして良心に富み、真に国民の利害を代表するの行動あらば、必らず一日も閣下の内閣と両立せずして、早く第十三議会に於て破裂を見たりしや疑ふ可からず、然るに内閣の相手とせる議会は、醜怪なる多数党派の毒泉に涜がされて其の良心を喪ひ、内閣の失政を匡救するを為さずして、寧ろ之れを助長せしむるの行動に出でたり、是れ閣下の内閣が、幸ひに原形を今日に保つを得たる所以なり。
故に閣下の内閣にして依然今後に存立することあらむか、此一方に於て議会の愈々腐敗する運命を予想す可く、一方に於ては又閣下の失政益々増加するをも予想せざる可からず、斯くの如きは豈国民の能く忍ぶ所ならむや、我輩は必らずしも好で閣下の過失を追究せむとするものには非ず、さりながら閣下にして之れを自覚せざる以上は、我輩は有りのまゝに事実を挙示して閣下の反省を求めざる可からず、顧ふに閣下が一介の武弁を以てして今日の難局に当る初より経綸の一も観る可きものなきは又当然なりと
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