て、之れを閣下の聡明に訴へて、万一の反省を求めむと欲するの微意のみ、我輩は曾て閣下に何の恩怨なく、又何の求むる所なし、則ち其歎美す可きを歎美し、攻撃す可きを攻撃するに於て、一に事実と理義に拠りて公明正大の論断を下だすに過ぎざるなり。
 相公閣下、率直にいへば、我輩は閣下を当世の大政治家として、其人物を崇拝するものに非ず、又内治外交の政策に付ても、我輩は不幸にして多く閣下に同情を表する能はざるを悲む、さりながら維新の元勲として閣下の功労は遠く伊藤井上の二者に出で、其維新後に於ける文武の事業も、亦赫々として人目に輝くもの多し、乃ち我輩は閣下の人物及其政策に敬服せざるの故を以て、決して閣下の国家に貢献したる功労を忘るゝものに非ずと雖も、此れと同時に、我輩は近来閣下の政治的過失頗る少なからざるを認識し、而して閣下の晩節之れが為めに大に負傷したるの事実をも認識するに於て、こゝに謹で閣下の処決を促がすの公開状を与へんとす。
 相公閣下、閣下は議会の盲従に依りて、既に二大宿題を解釈し得たり、一は第十三議会に於ける増租案にして、一は第十四議会に於ける衆議院議員選挙法なり、此二大宿題は共に前代内閣の持て
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