でたるは、事実として伝へられたれども、是れとても伯が熱心に主張したるには非ざりしといふ。山県侯の謹慎を以てして、豈斯くの如き暴論を唱ふることあるべけんや。
余は曾て侯は出処に巧みなる人なりと評したることあり。其今囘に処する所以の者を観るに、亦頗る其巧処あるに感服すと雖も、侯は到底政治家に非ず。久しからずして必らず退隠せむ。唯だ其現在の位地は、侯が従来養ひ来れる潜勢力によるものなるを知らば、侯の潜勢力にして存在する限りは、侯は決して未だ政界の死人に非ずと知るべし。(三十二年一月)
山県首相に与ふ
※[#始め二重括弧、1−2−54]一※[#終わり二重括弧、1−2−55]
侯爵山県公閣下、我輩は多年閣下の政敵として論壇に立つものなりと雖も、閣下の徳を頌するに於て、亦敢て政府の属僚に譲らざるの誠実を有せり、彼の政府の属僚が閣下の徳を頌するや、動もすれば其過失をも弁護して閣下を誤らむとするものあり、我輩の閣下の徳を頌するや、唯だ其頌す可き所以を頌して、有りのまゝに所見を披陳するに外ならず、随つて閣下の過失を挙示して忌憚なき所あるも、故らに訐いて以て直とするには非ずし
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