一座たる人を指名せよと求めば、子は必ず山県侯を指名せむ。是れ侯は三尊中最も大なる潜勢力を有する人たればなり。伊藤侯は潜勢力なきに非ず※[#白ゴマ、1−3−29]されど其現在の位地は寧ろ孤立なり※[#白ゴマ、1−3−29]一見すれば其名望甚だ広大なる如くなれども、実は漠然として定形なき名望のみ※[#白ゴマ、1−3−29]侯と利害休戚を同うするものは、伊東巳代治、末松謙澄、金子堅太郎の二三あるに過ぎずして、其領分は頗る狭隘なるものなり※[#白ゴマ、1−3−29]井上伯に至ては、殆ど純然たる政友を有せず、其有する所のものは、山県侯の系統に属する人物にして、伯に専属するものにはあらじ。例へば都筑馨六、小松原英太郎、藤田四郎、古沢滋の如き其他中央官府及び地方庁に散在する属僚の如き、皆是れなり。
 顧みて山県侯の系統を見よ、現内閣に於ては、清浦奎吾、曾禰荒助、桂太郎の三氏固より侯の直参たり※[#白ゴマ、1−3−29]荒川顕正子の如きは、世人或は伊藤系統に属するものなりと想像するものあれども、子は夙に山県侯の推挽によりて漸く顕要の位地を占めたる人なるを以て、若し両侯両立せざるの時あらば、子恐らくは、
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