犠牲に供したりしやも知るべからず。况んや是れと同時に第三者に対する外交関係漸く過敏ならむとしたるに於てをや。勿論当時伯が果して韓国問題を以て和戦を断ずるの腹案ありしや否やは疑問なれども、兎に角韓国問題と条約改正とは、伯に於て軽重し難き二大懸賞案たりしは言ふを待たず。而も伯は屡次白刄の下を潜ぐるが如き態度を以て、巧みに韓国問題の解決手段を進行すると共に、断然条約改正の談判を開始して遂に其の目的を達したりき。此の期間は伯の智力の最も発越したる絶頂にして、又実に外交劇の能事を尽くしたる一齣なりき。且つ伯が外交団に於ける英国の優勝位地を認識して、先づ之れと条約改正を商議したるは、単に条約改正の成功を早めたるに止らず、其の将来の帝国外交を支配する大方針は、亦既に此の時に於て定まれりと謂ふべし。則ち日露戦争前後二囘に締結せられたる日英同盟の如き、蓋し伯の政略より胎生したる産物たるに過ぎず。第三に伯は世界主義を外務省に輸入したりき。伯は以為らく、帝国をして国際会議の一員たらしめむとせば先づ形式実質共に欧洲文明と諧調する政略を執らざるべからずと。此の政略は往々非愛国的なりと認められて、保守派より最も激
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