いへば、寧ろ極めて單純簡朴なりと評すべし。此の私生涯に含蓄せられたる趣味も[#「此の私生涯に含蓄せられたる趣味も」に白丸傍点]、亦從つて公衆的ならずして個人的なり[#「亦從つて公衆的ならずして個人的なり」に白丸傍点]、一般的ならずして家族的なり[#「一般的ならずして家族的なり」に白丸傍点]。私生涯の彼は書院の人にして、彼は僅に漢詩を作り、和歌を詠ずるの閑趣味を解するのみ。圍碁を弄し謠曲を奏するの娯樂あるのみ。有體にいへば山縣公爵は決して公衆の好愛する政治家に非ず。然れども世には一般公衆に好愛せられずして、却つて鞏固なる勢力を有する政治家あり。彼は一般公衆に對しては[#「彼は一般公衆に對しては」に白三角傍点]、一の快感を與ふべき態度を示さず[#「一の快感を與ふべき態度を示さず」に白三角傍点]。彼は自己の能事を盡くして[#「彼は自己の能事を盡くして」に白三角傍点]、必らずしも其の公衆に知られむことを願はず[#「必らずしも其の公衆に知られむことを願はず」に白三角傍点]。彼は浮泛なる群情に殉ずるを爲さゞる代りに[#「彼は浮泛なる群情に殉ずるを爲さゞる代りに」に白三角傍点]、少數の共同者に信頼せ
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