講ぜざるものは[#「而も唯だ時代を非認するのみにて別に經綸の策を講ぜざるものは」に傍点]、是れ哲學者にして政治家に非ざるを如何せむ[#「是れ哲學者にして政治家に非ざるを如何せむ」に傍点]。
 近時動もすれば政黨より逃がれて一身を潔くせむとするの人あり※[#白ゴマ、1−3−29]其情諒す可きものありと雖も、亦一種の厭世觀のみ※[#白ゴマ、1−3−29]政治家は徹頭徹尾現實世界の人なり※[#白ゴマ、1−3−29]現實を離れて政治なるものなく、現實世界を外にして政治家の働く可き場所あることなし※[#白ゴマ、1−3−29]時代非なればとて政治を中止す可からず[#「時代非なればとて政治を中止す可からず」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]政黨腐敗したればとて必ずしも政黨其物を非認す可き謂れなきに非ずや[#「政黨腐敗したればとて必ずしも政黨其物を非認す可き謂れなきに非ずや」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]况んや十分政黨の價値を認識せる近衞公に於てをや※[#白ゴマ、1−3−29]然らば公は既成政黨に入らむ乎※[#白ゴマ、1−3−29]若し既成政黨に入るとせば、孰れの政黨に入る可き乎。
 公の既成政黨に入るは[#「公の既成政黨に入るは」に白丸傍点]、絶對的に利ならず[#「絶對的に利ならず」に白丸傍点]、又絶對的に害ならず[#「又絶對的に害ならず」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]請ふ末松男の例を觀察せんか※[#白ゴマ、1−3−29]顧ふに自由黨は決して末松男の理想を滿足せしむるの政黨にはあらじ※[#白ゴマ、1−3−29]唯だ彼は政黨の勢力を認識する政治家なるを以て、比較上政見相接近したる自由黨に入りたるのみ、其一利一害の多少は[#「其一利一害の多少は」に傍点]、要するに彼れの思想と自由黨との調和の度合如何に由れり[#「要するに彼れの思想と自由黨との調和の度合如何に由れり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]換言せば[#「換言せば」に傍点]自由黨が彼れの理想を容るゝこと多ければ多きだけ彼れの利多く[#「自由黨が彼れの理想を容るゝこと多ければ多きだけ彼れの利多く」に傍点]、之れに反すれば其結果隨て同じからずといふまでなり[#「之れに反すれば其結果隨て同じからずといふまでなり」に傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]近衞公に於ても又然り※[#白ゴマ、1−3−29]假りに公をして進歩黨に入らしめよ[#「假りに公をして進歩黨に入らしめよ」に白丸傍点]、進歩黨には公を崇拜するもの頗る多く[#「進歩黨には公を崇拜するもの頗る多く」に白丸傍点]、且つ公の人物を崇拜するのみならず[#「且つ公の人物を崇拜するのみならず」に白丸傍点]、公の政見に同情を表するもの亦少なからざるを以て[#「公の政見に同情を表するもの亦少なからざるを以て」に白丸傍点]、其利必らず末松男の自由黨に於けるよりも大なるものあらむ[#「其利必らず末松男の自由黨に於けるよりも大なるものあらむ」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]而も其の決して公の理想を滿足せしむる能はざるものたるは毫も自由黨對末松男の關係に異らざる可きのみ[#「而も其の決して公の理想を滿足せしむる能はざるものたるは毫も自由黨對末松男の關係に異らざる可きのみ」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]人或は公が既成政黨の首領たる伎倆あるや否やを疑ふものあれども、是れは無益の疑問なり※[#白ゴマ、1−3−29]進歩黨は百二十餘の代議士を有すと稱すれども、一人の大隈伯に代る可き好首領なく、自由黨は亦百頭顱に近かき代議士を包有すと雖も、伊藤侯に非ずむば、其全黨を壓するの資望あるものなし※[#白ゴマ、1−3−29]近衞公は固より最良の政黨首領に非ざる可し[#「近衞公は固より最良の政黨首領に非ざる可し」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]さりながら星亨にして[#「さりながら星亨にして」に白丸傍点]、犬養毅にして[#「犬養毅にして」に白丸傍点]、將た末松謙澄にして[#「將た末松謙澄にして」に白丸傍点]、政黨の首領たるを得可くむば[#「政黨の首領たるを得可くむば」に白丸傍点]、公は更に彼等よりも大なる首領たるを得可きに非ずや[#「公は更に彼等よりも大なる首領たるを得可きに非ずや」に白丸傍点]。
 公若し既成政黨に入るを利あらずとして別に一政黨を組織せば如何※[#白ゴマ、1−3−29]是れ亦面白し※[#白ゴマ、1−3−29]既成政黨の孰れにも關係なき中立派は喜むで公を迎ふるのみならず、既成政黨の腐敗に厭き果てたる健全なる同志者は、亦必らず響應して起たむ※[#白ゴマ、1−3−29]是れ伊藤侯の曾て計畫して未だ實行せざるもの※[#白ゴマ、1−3−29]公乃ち今日伊藤侯の未だ實行せざるものを實行する、亦妙ならずとせむや。
 歸朝した
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