の傳令使たる恒松某が政府の爲に重寶がられたるかを見よ」に傍点]、斯くの如くにして盲從相談の委員會は本會議の議事を奪ひ[#「斯くの如くにして盲從相談の委員會は本會議の議事を奪ひ」に傍点]、斯くの如くにして政府の提案は大抵討論を用ゐずして通過せらる[#「斯くの如くにして政府の提案は大抵討論を用ゐずして通過せらる」に傍点]、則ち我輩は二億五千四百萬餘圓の大豫算を提出したる政府の大膽を不思議とも思はず[#「則ち我輩は二億五千四百萬餘圓の大豫算を提出したる政府の大膽を不思議とも思はず」に傍点]、又此未曾有の巨額に對して[#「又此未曾有の巨額に對して」に傍点]、僅に軍事費に於て四十餘萬圓を削減したる議會の柔順なるにも驚かざるなり[#「僅に軍事費に於て四十餘萬圓を削減したる議會の柔順なるにも驚かざるなり」に傍点]。
議者又當期議會が建議案の頗る多かりしを奇異の顯象なりといふ、然り貴族院に於て十二種、衆議院に於て七十二種の建議案を見たるは、實に初期議會以後の一大奇觀たるに相違なし、特に政府が國庫の負擔を増加するを憂へずして動もすれば漫然之れを迎合するの状ありし如き、固より常識あるものゝ判斷に苦む所たり、さりながら其の原因は頗る單純にして[#「さりながら其の原因は頗る單純にして」に傍点]、唯だ是れ議會の壞血症に罹りたる事實を表示する顯象なりといはむのみ[#「唯だ是れ議會の壞血症に罹りたる事實を表示する顯象なりといはむのみ」に傍点]、案ずるに此等の建議案中には間々國家的問題を含めるものなきに非ざれども、其の相爭ふて提議したるものは、總じて政治的營利の黴菌に襲はれざるものなし、例へば利益分配の事情の爲に或る黨派の間に紛擾あり、以て一旦衆議院に於て否決せられたりし若松港築港問題の如き、最初は自由黨の黨議とまでなりたる鐵道國有法案が、中ごろ同一事情の爲に除外例を主張する二十七人組を出だし、其の極遂に之れを委員會に握り潰ぶしたる如き、即ち明白に議會腐敗の事實を説明するものに非ずして何ぞや、且つ他の一方に於て、議員涜職法案が薄弱不明なる理由の下に否決せられたること、尾崎發言に關する事實調査の動議が空しく委員會に握り潰ぶされたるとは亦實は議會腐敗の反影なるを認識す可き一大顯象にして、凡そ斯る顯象を以て滿たされたる議會が、國民の利害を顧念とせざる行動あるは又唯だ當然なりといはむのみ。
相公閣下、閣下は二億五千四百萬圓の大豫算を無難に通過したるを以て十分の欣榮とする所なる可し、政治的營利を事として國民の負擔を増加するの建議案を提出する議會は、固より閣下の内閣が提出したる大豫算に削減を加ふる理由はある可からず、閣下も亦寧ろ此の弱點を利用せむとしたり、故に國庫の負擔を増加する建議案も勉めて之れを迎合し、以て財政上他日の破綻を見るを毫も意とせざるなり、而して是れ實に國家の爲めに悲む可きの不幸なり。
※[#始め二重括弧、1−2−54]八※[#終わり二重括弧、1−2−55]
山縣相公閣下、我輩は閣下の議院政略が、市價を有する多數の人頭を買收したる點に於て成功したるを認識す、而して累々たる多數の人頭は、金錢若くば、其他の利益を條件として、爭ふて良心を賣り、意見を賣り、投票を賣り、起立を賣りたる政治的市場の取引に對し、敢て張膽明目して精嚴なる道徳上の批評を加ふるは、我輩寧ろ其の徒爾に屬するを知る、さりながら閣下にして自ら其の初心を點檢せば、閣下は宜しく漫りに議院政略の成功に誇るべからず、閣下或は議會を盲從せしめたるを以て能く内閣の目的を達したりとせむ、而も事實をいへば閣下の議會に盲從したるもの亦少しとせず、試に閣下の爲めに一二の實例を開示せむ。
曩きに閣下が第十三議會に臨むや、財政計畫の唯一基礎として地租率を百分の四に増加するの法案を衆議院に提出したりと、其意地租以外の財源を以て到底財政計畫の基礎を鞏固ならしむるに足らずと爲し、即ち他の零細なる歳入に求めずして、專ら地租増徴に依頼せむとするに在りき、然るに閣下の提携を約したる自由黨が多く之れに反對するに及で、遂に最初の提案を一變して、五箇年期を條件とせる三分三厘説に折合ひ、以て僅に議會を通過するを得たり、之れを表面より見れば、單に四分案に對して七厘の減率を爲したるに過ぎずと雖も、實は財政計畫を根本より變更して議會の要求に盲從したるに外ならず[#「實は財政計畫を根本より變更して議會の要求に盲從したるに外ならず」に白丸傍点]、何となれば一定の年期を條件とせる課税法は[#「何となれば一定の年期を條件とせる課税法は」に白丸傍点]、既に鞏固なる財政計畫の目的と兩立せざるのみならず[#「既に鞏固なる財政計畫の目的と兩立せざるのみならず」に白丸傍点]、現に此の減率の結果として[#「現に此の減率の結果として」に白丸傍点]
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