の標幟には必要なりしも、鎌倉幕府の政治家には、何の必要なかりき。固より立憲國の黨派は公黨にして私黨にあるざるがゆゑに、其の主義綱領は、即ち國家に對する公念の發動にして、黨派の私意にあらざる可し。然れども同一主義の政友會憲政本黨が[#「然れども同一主義の政友會憲政本黨が」に白丸傍点]、故らに對壘相當りて相爭ふは何ぞや[#「故らに對壘相當りて相爭ふは何ぞや」に白丸傍点]、知らず所謂る主義綱領なる者は[#「知らず所謂る主義綱領なる者は」に白丸傍点]、黨派に於て何の用を爲しつゝある乎[#「黨派に於て何の用を爲しつゝある乎」に白丸傍点]。余は現時の黨派が使用しつゝある主義綱領が[#「余は現時の黨派が使用しつゝある主義綱領が」に白丸傍点]、殆ど赤旗白旗と何の選む所なきを惜まざるを得ず[#「殆ど赤旗白旗と何の選む所なきを惜まざるを得ず」に白丸傍点]。故に若し黨派の利害と國家の利害と兩立せざる場合に於いては、眞の政治家は往々黨派の主義綱領を輕視することあり、ピールの穀法廢止論を採用して變節の名を甘むじたる如き、正さしく其の一例たり。或は政黨は公黨なるがゆゑに、其の利害は國家の利害と衝突せずといはむか、是れ亦黨人の自觀なるのみ[#「是れ亦黨人の自觀なるのみ」に白三角傍点]。人は言ふ、伊藤侯は黨首の器にあらずと、余も亦爾かく信ぜり、何となれば彼は此の自觀を固執する能はざるの位地に在ればなり[#「何となれば彼は此の自觀を固執する能はざるの位地に在ればなり」に白丸傍点]。然れども是豈侯の政治家たるに害あらむや[#「然れども是豈侯の政治家たるに害あらむや」に白丸傍点]。
抑も侯の政友會を組織したるは、實に模範政黨を作らむが爲なり。模範政黨とは、黨派的私情を去り國家的公見に就くの政黨なるべし。侯は此の目的に依りて政友會を指導せむとしたるを以て、其の黨首としての行動は、反つて黨人の意に滿たざるもの多きが如し。有體に評すれば[#「有體に評すれば」に傍点]、彼等は[#「彼等は」に傍点]、侯が國家元老の一人として政友會に總裁たるを以て[#「侯が國家元老の一人として政友會に總裁たるを以て」に傍点]、唯だ此の一點のみにても[#「唯だ此の一點のみにても」に傍点]、頗る政友會に利ありと信じたりき[#「頗る政友會に利ありと信じたりき」に傍点]。何となれば[#「何となれば」に傍点]、元老たるの資望は[#「元老た
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