劾の上奏案が現はるゝのであつたかも知れない。併しソレにしても、十分當局者に質問をしたり、説明を求めたりして、其の上で正々堂々たる討論をも悉くし、今度こそは大に内閣の油を搾つて遣らうといふのは、聯合黨領袖株の心算であつたらしい。ソレデ河野が若し聯合黨の爲に謀つたならば、彼れは獨斷でアのやうな奉答文を朗讀する事は出來ぬ筈である。大石正巳は河野議長の處爲を非常に喜むで居つたさうだが、ソレハ一時の感興に打たれたからであつて深く考へて見たら決して喜ぶべき譯のものでない[#「ソレハ一時の感興に打たれたからであつて深く考へて見たら決して喜ぶべき譯のものでない」に傍点]。
 △如何に目的が正しくても、手段が正しくなくては憲政を圓滿に發達せしむることが出來ない。少々は目的が間違つて居ても、之れを達するの手段が正しければ天下の同情を得ることがある。かるがゆゑに、政治家の苦心は、どうしたら手段が正しく見えるだらうと工夫することであつて、所謂る策士といふ奴は[#「所謂る策士といふ奴は」に白丸傍点]、目的は兎も角も手段を正しく見せ掛けるやうに仕組むのが巧みである[#「目的は兎も角も手段を正しく見せ掛けるやうに仕組むのが巧みである」に白丸傍点]。河野の今囘の遣り口は、全く之れとは反對であるから、たとひ河野自身では俯仰天地に恥ぢざる積りでも、世間では陰險悖戻の策略を用ゐたものゝやうに彼れを非難するのである。
 △河野自から語る所では、奉答文を政治上の意義あるものとするのは、彼れの年來の持論で、彼れは議長の候補者に推された時、『若し當選して議長の椅子に就くことゝなつたら、此の持論を實行して見ようと決心した』さうだ。是れは眞實の自白[#「眞實の自白」に白三角傍点]に相違ない。要するに朝野を驚かした奉答文も、唯だ此の單純なる功名心[#「單純なる功名心」に丸傍点]から生れたので、策略だの陰謀だのといふほどのものでもないと考へる。
 △然らば彼れは何故に此の事を一應政友に相談せずに獨斷に遣つたかといふに、ソコが則ち河野本來の面目で[#「ソコが則ち河野本來の面目で」に二重丸傍点]、彼れは大事を行ふ場合に[#「彼れは大事を行ふ場合に」に二重丸傍点]、人と相談する男でない[#「人と相談する男でない」に二重丸傍点]。又た責任を人と分かつやうなことは好まない方だ[#「又た責任を人と分かつやうなことは好まない方だ」に
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