ざるを以て」に白丸傍点]、此の一成功を沒するに忍びざるなり[#「此の一成功を沒するに忍びざるなり」に白丸傍点]。(廿九年五月)

     最近の板垣伯

      其一 劈頭の喝破
 曾て自由神の化身として、憲政の天國を建設す可く藩閥の惡魔と健鬪したる老英雄も、今や其の屠龍搏虎の手を收めて、平和にして且つ女性的なる社會事業に老後の慰藉を求むるの人となりぬ。曰く風俗の改良、曰く日本音樂の改良、曰く勞働者の保護、曰く盲人の教育、曰く女囚乳兒の保育、是れ彼れが老夫人の熱切なる同情と協力とに頼りて[#「是れ彼れが老夫人の熱切なる同情と協力とに頼りて」に白丸傍点]、現に社會に寄與しつゝある生涯の殘光なり[#「現に社會に寄與しつゝある生涯の殘光なり」に白丸傍点]。彼れの前世紀は、血の歴史なり、戰鬪の歴史なり、波瀾多き歴史なり。彼れは屡々不忠不臣の名を受けたりき。彼れの一擧一動は常に探偵の報告資料たりき。彼れの黨與は總て叛逆匪徒を以て目せられたりき。あらゆる迫害、あらゆる追窮は、高壓力に富める武斷政府に依りて間斷なく試みられたりき。豈唯だ此に止らむや。彼れは反對黨の毒刄に傷けられて殆ど生命を喪はむとしたりき。嗚呼當年の彼れを以て之れを現時の彼れに比せば、殆ど喬木を出でて幽谷に遷りしが如し、誰れか其の變化の甚しきに驚かざるものあらむや。
 然れども彼れは二十餘年間國民的運動の首領たりしが爲に[#「然れども彼れは二十餘年間國民的運動の首領たりしが爲に」に傍点]、其の資望は尚ほ隱然として[#「其の資望は尚ほ隱然として」に傍点]、重きを公私人の間に有せり[#「重きを公私人の間に有せり」に傍点]。彼れが勢力の源泉たりし一大政黨は[#「彼れが勢力の源泉たりし一大政黨は」に傍点]、既に彼れの手を離れて伊藤侯の領有に屬したれども[#「既に彼れの手を離れて伊藤侯の領有に屬したれども」に傍点]、新首領の訓練未だ到らずして[#「新首領の訓練未だ到らずして」に傍点]、往々舊首領の復活を希望するものあるのみならず[#「往々舊首領の復活を希望するものあるのみならず」に傍点]、世には人の美徳を歎美するもの稀れにして[#「世には人の美徳を歎美するもの稀れにして」に傍点]、寧ろ他の意中を曲解するを喜ぶの批評家多きがゆゑに[#「寧ろ他の意中を曲解するを喜ぶの批評家多きがゆゑに」に傍点]、彼れ少しく動けば[#「彼
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