深患に陷りて自ら悟らざる黨人に警告を與へむとするのみ[#「其の意實に此の深患に陷りて自ら悟らざる黨人に警告を與へむとするのみ」に白丸傍点]。
 是に由て之れを觀れば、大隈伯の辭職は、本黨の發展上必要なるものに非ず、要するに其の申出は唯だ本黨の將來に對する一大警告たるに過ぎざるのみ。然れども政治の全局より案ずれば[#「然れども政治の全局より案ずれば」に白三角傍点]、余は寧ろ伯が斷然本黨を棄つるの擧に出でたるを歡迎す[#「余は寧ろ伯が斷然本黨を棄つるの擧に出でたるを歡迎す」に白三角傍点]。蓋し伯は伯自ら聲言したる如く、たとひ本黨との關係を絶つも、活動の餘地は到る處に之れあるなり。伯は單身にして偉大なる勢力を民間に有すること、猶ほ伊藤侯が丸腰にして能く威望を朝廷に有するが如し。伯は元來本黨に依て重きを爲し居るの政治家に非ざるなり。本黨或は亡ぶるとも、伯は未だ遽に政治的死亡を遂ぐるの癈人に非るなり。一政黨を指導訓練するは[#「一政黨を指導訓練するは」に白丸傍点]、必らずしも無用なりと謂ふべからずと雖も[#「必らずしも無用なりと謂ふべからずと雖も」に白丸傍点]、國民を指導訓練するは[#「國民を指導訓練するは」に白丸傍点]、更に最も必要なりと謂はざる可からず[#「更に最も必要なりと謂はざる可からず」に白丸傍点]。今の黨人は、智識に於ても、品性に於ても、决して國民の高級分子に非ず。高級分子の政黨に入らざる所以は、國民全體の政治思想に進境なきが爲なり。而して國民の政治思想は、單に一般教育の力のみに依て之れを發達せしむべきに非ず、別に偉人の人格より發動する感化力に待つもの多し。伯にして若し狹隘なる一政黨の範圍を脱して自由の地歩を占め[#「伯にして若し狹隘なる一政黨の範圍を脱して自由の地歩を占め」に白丸傍点]、政府の元勳たる伊藤侯と相對し[#「政府の元勳たる伊藤侯と相對し」に白丸傍点]、國民の元勳として黨派以外に活動の餘地を求めば[#「國民の元勳として黨派以外に活動の餘地を求めば」に白丸傍点]、伯の大なる人格は[#「伯の大なる人格は」に白丸傍点]、必らず國民全體を指導するの明星たらむ[#「必らず國民全體を指導するの明星たらむ」に白丸傍点]。是れ伯の晩節を善くするの道なり[#「是れ伯の晩節を善くするの道なり」に白丸傍点]。(四十年二月)

     大隈伯と故陸奧伯

 十二月十日及び二
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