※[#白ゴマ、1−3−29]大隈伯は宗教信者に非ず[#「大隈伯は宗教信者に非ず」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]然れども一種敬虔の情凛乎として眉目の間に閃くは以て伯が運命の外別に自ら立つ所あるを見るに足る[#「然れども一種敬虔の情凛乎として眉目の間に閃くは以て伯が運命の外別に自ら立つ所あるを見るに足る」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]蓋し伊藤侯の屡々失敗して毎に之れが犧牲と爲らざるは殆ど人生の奇蹟にして、大隈伯の屡々失敗して飽くまで其の自信を枉げざるは猶ほ献身的宗教家の如し※[#白ゴマ、1−3−29]故に伊藤侯は得意の日に驕色あり※[#白ゴマ、1−3−29]大隈伯は得失を以て喜憂せず。伊藤侯は英雄を尚び[#「伊藤侯は英雄を尚び」に白丸傍点]、大隈伯は功業を尚ぶ[#「大隈伯は功業を尚ぶ」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]夫れ英雄を尚ぶものは人の又己れを英雄視せんことを求む[#「夫れ英雄を尚ぶものは人の又己れを英雄視せんことを求む」に白丸傍点]、故に伊藤侯は外に向て英雄らしき詩を作り[#「故に伊藤侯は外に向て英雄らしき詩を作り」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]内に向て伊藤崇拜の隷屬を作る[#「内に向て伊藤崇拜の隷屬を作る」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]夫れ功業を尚ぶものは唯だ自家の經綸抱負を布かんことを望む[#「夫れ功業を尚ぶものは唯だ自家の經綸抱負を布かんことを望む」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]故に大隈伯は必ずしも英雄を畏れず[#「故に大隈伯は必ずしも英雄を畏れず」に白丸傍点]、必ずしも歴史上の人物に感服せず[#「必ずしも歴史上の人物に感服せず」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]其の古今を呑吐し、天下を小とするの概あるは蓋し之れが爲めなり。
 個人としての伊藤侯と大隈伯とは夫れ斯の如し※[#白ゴマ、1−3−29]約して之れをいへば、伊藤侯は太平時代の英雄[#「太平時代の英雄」に白丸傍点]にして、大隈伯は亂世時代の巨人なり[#「亂世時代の巨人なり」に白丸傍点]※[#白ゴマ、1−3−29]大隈伯の隆準豺目にして唇端の緊合せる、自然に難を排し紛を釋くの膽智あるを示し、伊藤侯の象眼豐面にして垂髯の鬆疎たる、自然に無事を喜び恬※[#「(冫+臣+犯のつくり)/れんが」、第3水準1−87−58]を好むの風度あるを見る※[#白
前へ 次へ
全249ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング