き、艦《ふね》も機も敵兵も大感電して、たちまち白熱する一抹の煙になって……。」
海相「ああ、もうよろしい。」
[#ここで字下げ終わり]

 短波殺人砲
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
陸相「で、どうするというのじゃナ。」
小僧「私の献上《けんじょう》しようと申しますのはデスナ、我国の兵の身長と敵兵の身長との甚《はなは》だしい相違に着眼したのです。こっちは一ポイント六メートル位で、あっちは二メートルもあります。」
陸相「フフン。」
小僧「そこで強烈なる電波発生機をこしらえます。つまり一種の送信機ですナ。その発生電波の波長たるやデスナ、近頃流行の短波にするのです。短波も短波、二メートルにするのです。」
陸相「ウム、ウム。」
小僧「この二メートルの超短電波が敵軍にぶっつかると、どうなるかというと、猛烈な電気振動が起ります。敵兵はこの電波をぶっかけられると、たちまち身体が強烈なる電気振動に包まれ、第一にやっつけられるのは心臓です。ギュッとねじられるような激しい刺戟を与えられ、心臓は忽《たちま》ちストップをしてしまいます。これで万万歳《ばんばんざい》です。」
陸相「うん、そいつは面白いが、こっちの兵には危険はないか。」
小僧「そりゃ大丈夫です。いまも申したとおり、こっちの兵は一ポイント六メートルで、メートルが足りませんから、そんな電波を身にうけても、電気振動が起らないから大丈夫です。」
陸相「よろしい。それまで!」
小僧「しかし出羽嶽《でわがたけ》みたいな背高ノッポは、出陣を見合わせにして下さい。そうでないと……。」
陸相「それまでッ、喋《しゃべ》り方《かた》やめイ」
[#ここで字下げ終わり]

 長江封鎖機《ちょうこうふうさき》
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
社長「ちょっと待って下さい。わしは製氷会社の社長ですよ。兵器を作れったって、出来ない相談ですワイ。」
小僧「そう思うのが畜生……イエその、つまり浅間しさですよ。出来ます、出来ます。立派に出来ます。社長さんが報国の精神さえあればですよ。もし無いというのなら、私の発明になる時計じかけの毒瓦斯《どくガス》を会社の中に仕掛けてゆきます。」
社長「マ、マ、待ってくれ給え、僕はナニもソノ……。」
小僧「よろしい。社長の精神は盲腸のつきあたりまでハッキリ見えました。では始めから遣《や》りなおしますよ。いいですか。あの長江の出口を止めちまうのです。するとあの夥《おびただ》しい水量は、海へ注ぐことが出来なくなってしまう。するともう向うは一遍で降参をしてしまいます。」
社長「どうも判らないですナ。」
小僧「判ってるじゃないですか。いつか長江の流域八百里に亙《わた》って大洪水があって困ったということがありましたろう。あれの十倍も二十倍も恐ろしいやつをやろうというのです。あの流域全体が水漬《みずづ》かりになっては、もう戦争は出来ません。」
社長「そりゃ巧い話だが長江の出口を止めるなんて、そんな大変なことが出来るものですか。」
小僧「そこがこの話ですよ。いいですか。大きな汽船の胴中に大きな製氷器械を据えつけるのです。つまり舷側《げんそく》にふれる水は、直ちに氷となるような仕掛けをするのです。そんな汽船をドッサリ作って――それの設備はみな貴方が国家へ寄附するのですが――それを長江の出口へ派遣して、昔あった閉塞戦《へいさいせん》に似た氷鎖戦《ひょうさせん》をやるのですよ。貴方の名誉は大変なものですぜ。」
社長「それはいいが、一体汽船はいくつ位あればいいのです。」
小僧「まず二百|艘《そう》ですかナ……これこれ気絶しちゃいけません。起きて下さい。」
[#ここで字下げ終わり]

 傷つかず拷問器《ごうもんき》
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
内相「お前かい、発明小僧ちゅうのは。」
小僧「さいでごわす。ところで本発明品は、まことに御便利でございましてナ、是非お買い上げを願いとう存じまするで、ヘエヘエ。」
内相「買う買わぬは後にして、早く品物を見せなさい。」
小僧「では……これでございます。この鎖《チェーン》ベルトがドンドン走りますんで。タンクの車輪の上を走るあの鎖ベルトと同じ様なものです。」
内相「鎖の上に何かヒラヒラ附いているのは何じゃ。」
小僧「これは皆|鷹《たか》の羽根です。」
内相「鷹の羽根がどうしたのじゃ。」
小僧「これが犯人の足の裏を、擽《くすぐ》るのです。まず犯人を椅子に縛りつけて置き、靴下を脱がせます。そしてその足の下へ此の器械を据えつけます。器械が動き出すと、鎖ベルトは輪になっていますから、羽根は犯人の足の裏を、いつまででも擽ります。遂に犯人はアハアハ笑い苦しんで、白状をいたします。むろんこの拷問は、すこしも傷がつきませんです。」
内相「ちょっと重宝《ち
前へ 次へ
全6ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐野 昌一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング