ど、発電量は多くなるからして、したがってモーターはよく動く。そういう婦人が、令夫人を始め数人も常備しているときは、発電量は頗《すこぶ》る豊富であるからして、これを水汲みだけに使用して余りがある。そのときは、風呂を沸すのに利用すると、更に経済である。
 婦人の座談会や演説会のときには、電灯をとぼすのに用いる。相当広い会場でも、十二分に照明が出来ること請合《うけあ》いである。
(本品は一|組《くみ》三円四十銭の見込。ゴムはときどき取り換えることを要する。ゴム一個二十銭なり。)

 家ダニ発射器
 本発明品は、家ダニを収容するポケット型の容器と、その一端《いったん》につけたる小型のスポイトよりなるものにして、スポイトを指先で押すときは、家ダニ容器の先端《せんたん》より、人知れず家ダニを発射し、相手にタカラしむることを得るものである。
 本器の用途は、いろいろとあるも、その一二例を挙げてみると、極めて通俗な用い方としては、路傍《ろぼう》にてめぐりあった月賦《げっぷ》の洋服屋の襟首に発射して、グズグズ云い訳けを云って時間を伸ばしているうちに、かの家ダニはほどよく相手の頸筋《くびすじ》に喰いつくが故に、痒《かゆ》さあまりて遂に月賦の催促などして居られなくなるを以て、そこを覘《ねら》ってこっちは雲を霞と遁走《とんそう》するのである。
 家ダニは一名エロ虫と称せられ、身体の軟部を好みて喰いつくを以て、ところによりては痒み甚だしきあまり厖大に発熱|腫脹《しゅちょう》(?)し、数時間なおらぬものなるを以て、そこを考えて、一種の若返り法として用いるもよろしく、健康なるものには一層健康さを加えしめ、和合《わごう》の実《じつ》をあげるによろし。
(本器の売価は一個金十五円也とし、その半分は国家へ税金として納付させる。詰《つ》め換《か》え用家ダニ十匹|筒入《つついり》十銭、五十匹筒入四十銭、百匹七十銭。なお徳用缶千匹入、二千匹入などを作る。)

 切符を折らせない方式
 本方式は折ってはならない切符を折るときは、切符内より鼬《いたち》の最後屁《さいごっぺ》の如き悪臭ある粘液を排泄《はいせつ》し、指などに附着するときは約一週間後にあらざれば、悪臭が脱けないように製作し、よって切符を折らせない方式である。
 これは某市電の某車掌君の発明にかかるものである。およそ人間というものは、しつけの悪いもので、電車に乗って金と引換えに切符や乗車券を渡して置くと、「折らないで下さい」と再三注意を与えて置くにも係《かかわ》らず、下車のときにはクルクルと巻物のように捲《ま》いてしまう者あり、或いはもうこれ以上折れないというほど小さく折り畳みて鼻糞大にしてしまうものあり、そのために切符を改める手前大いに事務|渋滞《じゅうたい》を来たすものであり。
 いくら注意を与えても、乗客は云うことをきかないので、本発明方式を提供した次第である。これを採用するときは天罰覿面《てんばつてきめん》、乗客は反省するであろう。
(本発明方式は、一電気局又は一電鉄会社一乗合自動車会社につき、金五千円也として権利使用を許す。)
〔附記〕折角の発明であったが、そんなことをするよりも、乗客が簡単に折ることの出来ないように、切符の厚さを増大《ぞうだい》し、たとえば省線切符位の厚紙に改造することによって円満に目的を達し得られることに気がつき、本発明は遺憾《いかん》ながら、どこの電鉄にも乗合自動車にも採用されない由《よし》である。

 感電砲
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海相「発明小僧というのは、君かネ。」
小僧「そうです。感電砲というのを発明しましたから、国家へ献上《けんじょう》します。」
海相「それはどうも、どこに持って来たのかネ。」
小僧「いや実物は重いので紙に書いて持ってきました。」
海相「二重リング陣形?」
小僧「そうです。下のは艦隊、上のは航空隊ですよ。やってくるところを、こっちは感電砲をサッと向けるですナ。釦《ボタン》一つ押すと紫電《しでん》一閃《いっせん》。太い二本の光の柱です。一本は真直に空中を飛び上る。もう一本は敵陣の中につっこむ。するとパッと黄煙《こうえん》が騰《あが》ると見る間に、艦《ふね》も敵兵も瞬間に煙となって空中に飛散する。これが本当の空中葬……。それでおしまいでサ。」
海相「なんだい、それは。」
小僧「つまりこれが感電砲ですよ。砲から空中へ紫光《しこう》の柱が立ったのは、上空にある強烈なる電気天井ヘビサイド層の電気を下へ導くための電離柱《でんりちゅう》です。これがために強烈なる電気が天井から下りて来る。下りて来るが早いか、もう一本、敵の中へ突っこんだ紫光の電離柱を導わって、敵艦や敵機に集中する。つまりヘビサイド層の強電気が敵軍の上に浴びせかかる。何条もってたまるべ
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