逓信省《ていしんしょう》が公衆電話にて行えるところで、近来は鉄道省も之を切符販売用に用い、専売局は煙草の自働販売器を認め、キャラメル、チョコレートの自働販売器あり、一時は地下鉄の改札までを十銭白銅貨に働く重力によって行ったものである。この外《ほか》、白銅貨の効用は甚だ多種なるも約束の紙数に達したれば擱筆《かくひつ》する。要するに十銭白銅貨は単なる貨幣だとばかり考えている方《かた》があったら、それは正に大なる認識不足であると申すべきである。十銭白銅貨は十銭貨幣であると同時に、重量|秤《はかり》であり、標的《ひょうてき》であり、爪磨きであり、交換手呼出器であり、切符|押出機《おしだしき》であり、煙草キャラメル押出機でもある。
結言
更に一般の場合、物その物の本来の使途以外に、此の白銅貨の如く科学的性能を様々に生かして用いられるものは色々とあると思うが、これが調査と研究とは、けだし文化史的にも科学史的にも興味のあることと信ずる。
底本:「海野十三全集 別巻2 日記・書簡・雑纂」三一書房
1993(平成5)年1月31日第1版第1刷発行
初出:「科学画報」誠文堂新光社
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