に中央放送局へ中継《なかつぎ》される。娑婆ではこれを、警察庁|公示《こうじ》事項《じこう》のニュースとしてC子の姿を放送する。それは、一ツには冥土への安着を報せ、二ツには娑婆に債権者でもあれば今の内に申し出て、何とか解決方法をとらせるためである……」
「一寸待ったAさん。君の話は面白いが、何だか落語か法螺大王《ほらだいおう》の話をきいているような気がする。Aさん、怒っちゃいけないよ――君は本当に正気《しょうき》で言ってるのかい。」
「度し難いBさん。これは皆、専門の学術から割り出したもので、根拠のないことなど、僕は喋《しゃべ》らない。唯、くだけて話すから、落語のように聴こえるのだ。」
「じゃ不審の点を質問するがネ。何故この世とあの世とがラジオで連絡ができるのだい。」
「早い話が『人間は死すとも霊魂は不滅である』という。これが今から十年経たないうちに物理的に証明されるのだ。霊魂はラジオ、即ち電波を発射する。霊魂がラジオを出すんじゃないか、とは今日でもある一部の学者が考えている。しかし電波ならば其の一番大切な性質であるところの波長が何メートルだか判っていないのだ。これが今から十年以内に発見される。電波長が判ればあとはラジオとして物理的に取り扱えるようになる。」
「フーン、そんなものかな。――それから、冥土に居るC子の姿が何故娑婆から見えるのだい。」
「それは無線遠視《テレヴィジョン》――つまり、『眼で見るラジオ』というのが完成して実用されるからだ。無線遠視《テレヴィジョン》は冥土に於いては夙《つと》に発達している。地獄の絵を見ると、お閻魔《えんま》さまの前に大きな鏡がある。赤鬼青鬼にひったてられて亡者《もうじゃ》がこの鏡の前に立つと、亡者|生前《せいぜん》の罪悪《ざいあく》が一遍の映画となって映り出す。この大魔鏡《だいまきょう》こそは航時機《タイムマシーン》を併用して居る無線遠視器である。」
「脅すぜAさん。じゃ矢張《やっぱ》りお閻魔さまの前に並んでいる『見る眼』や『嗅ぐ鼻』も、ラジオ的に理屈のあるものなのかい。」
「勿論さBさん。『嗅ぐ鼻』は無線方向探知器《ラジオ・デレクションファインダー》の発達したもの。『見る眼』は光電受信機《フォト・エレクトリック・レシーバー》の発達したるものなのサ。これ等も十年後には、君の前へ正体を明らかにするだろう。」
「じゃ、うっかり死ぬわ
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