てから十五分も歩かなければ到達しないほど辺鄙《へんぴ》なところに在る。その道を歩きながら、夜の人通りに物珍らしさを感じたのであった。歩いて行くに従って路の上に含有される人間の密度が多くなって来たが、それは益々増える一方で、軈《やが》てのこと科学者は人間の群から圧迫せられてどうにも動けなくなった時、彼自身が縁日の夜店の真唯中に在ることを発見した。
 首をもちあげて、あたりをキョロキョロ眺めてみると馬鹿に明るい――というよりか大変な眩しさであった。恐らくは明るさの密度の点では銀座街もこれには及ぶまいと思われた。縁日の商人は、陰影のない照明をやるのに照明学に従って間接照明法を用いず電球を裸にむき出した儘《まま》の直接照明法で、これに成功しているのであった。その代り電柱の上のポール、トランスは今や過負荷のために鉄心《コーア》はウンウン呻り、油はジュウジュウとあぶくを湧き立てて対流をはじめ、捲線の被覆は早くも黄色い臭いをあげて焦げつつあった。尤もこの勇敢なる裸電球の照明法は行人の瞳孔を極度に縮少させ、商人が売っている品物のあら[#「あら」に傍点]を発見し得るほど充分永く、行人の注視を許さないとい
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