ええ、このよぼよぼのやせ馬《んま》め!』と口小言をいうのでしたが、栗毛はその返事にただもぐもぐと口を動かすだけでした。
さてあのとかげは、尾なしのとかげになりました。もっとも二三週間すると、尻尾がまたはえはしましたが、はえた尾はいつまでたっても変に先っぽのとんがっていない、黒っぽい尻尾でありました。でとかげは、いったいどうして尻尾にけがをしたのかと尋ねられますと、小さくなってこう答えるのでありました。
「あたくしは自分の信念を述べようと決心したばかりに、こうしてちょん切られてしまいましたの。」
まったくとかげのいう通りでした。
底本:「あかい花 他四篇」岩波版ほるぷ図書館文庫、岩波書店
1975(昭和50)年9月1日第1刷発行
1976(昭和51)年4月1日第2刷発行
入力:蒋龍
校正:染川隆俊
2009年1月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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