のものかな? 何しろあれほどの品であるからには、名門出の富豪連中がまだ質屋へものを曲げにやるまでにならず、何かひどく金のいるような時には、むしろこのマーシェンカの親父さんみたいな内密の高利貸の手に、財産を委託する方を快しとした、そんなふうの天下泰平な大むかしから、秘蔵されているものらしいな」と、まあそんなことを考えた次第なのさ。
その真珠は大粒で、ふっくらと円みがあって、ひどく冴え冴えした色気のものだった。のみならず首飾りの作りは、いかにも昔風の好みで、いわゆるルフィール型とか瓔珞《ようらく》型とか呼ばれるあれだった。――つまり背後のところは、小粒ながら一ばんまん円なカーフィム真珠でもって始まって、だんだん大粒になるブルミート真珠がそれにつづき、やがて下へ垂れるあたりになると大豆ほどの粒がつらなって、最後のまん中の部分には三粒のびっくりするほど大きな黒真珠が、群を抜いて美しい光耀《かがよい》をはなっている、という仕組みなのだった。この見事でもあり高価でもある贈物の前に出ては、うちの弟のプレゼントなんかは月夜の星も同然、すっかり気おされてしまった。手みじかに言ってしまえば、われわれむく
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