よ、さあ!
ラネーフスカヤ 売れたの、桜の園は?
ロパーヒン 売れました。
ラネーフスカヤ 誰が買ったの?
ロパーヒン わたしが買いました。(間)

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ラネーフスカヤ夫人、がっくりとなる。もし肘《ひじ》かけ椅子《いす》とテーブルのそばに立っていなかったら、倒れたにちがいない。ワーリャはバンドから鍵束《かぎたば》をはずし、それを客間中央の床へ投げつけて退場。
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ロパーヒン わたしが買ったんです! ちょっと待ってください、皆さん、お願いです。わたしは頭がぼおっとしてしまって、ものが言えないんです。……(笑う)わたしたちが競売場に着いてみると、デリガーノフはもう来ていました。ガーエフさんには、たった一万五千しかないのに、あのデリガーノフはいきなり、抵当額の上に三万と吹っかけてきました。こいつはいかんと思って、わたしはやつを向うにまわして、四万と打って出た。向うは四万五千とくる。そこでこっちは五万五千。つまり、やつは五千ずつ上げてくるのに、わたしは一万ずつ上げて行った。……やがて、ケリがついた。抵当額
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