礼!
ロパーヒン どうしまして。結構なご馳走《ちそう》で、あつくお礼を。
ワーリャ 礼には及びません。(その場から離れ、やがて振りかえって、やさしく尋ねる)お怪我《けが》はなかったかしら?
ロパーヒン いや、なあに。もっとも、でっかい瘤《こぶ》ぐらいできそうですがね。
広間の声々 ロパーヒンが来た! ロパーヒンさんだわ!
ピーシチク いよう、これはこれは、ようこそご入来《じゅらい》……(ロパーヒンにキスする)この可愛《かわい》い男は、ちょっぴりコニャックの匂《にお》いがするな、おい君。われわれもこの通り、愉快にやっとるよ。

[#ここから2字下げ]
ラネーフスカヤ夫人登場。
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
ラネーフスカヤ まあ、あなたでしたの、ロパーヒンさん? どうしてこんなに遅かったの? レオニードはどうしまして?
ロパーヒン お兄さまも、一緒に戻《もど》られました。すぐ見えます……
ラネーフスカヤ (わくわくしながら)で、どうでしたの? 競売はありまして? さ、話してちょうだい!
ロパーヒン (嬉しさを外へ出すまいとして、しどろもどろに)競
前へ 次へ
全125ページ中94ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
神西 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング