ね!
トロフィーモフ 人類は、しだいに自己の力を充実しつつ、進歩して行きます。今は人知の及びがたいものでも、いつかは身近な、わかり易《やす》いものになるでしょう。ただそのためには、働かなければならない。真理を探求する人たちを、全力をあげて援助しなければならんのです。今のところ、わがロシアでは、ごく少数の人が働いているだけで、僕の知っているかぎりインテリ〔ゲンツィヤ〕の大多数は、何一つ求めもせず、何一つしもせず、差当り勤労に適しません。インテリなどと自称しながら、召使は「きさま」呼ばわりする、百姓は動物あつかいにする、ろくろく勉強もせず、何一つ真面目《まじめ》には読まず、なんにもせずに、ただ口先で科学を云々《うんぬん》するばかり、芸術だってろくにわかっちゃいない。みんな真面目くさって、さも厳粛な顔つきをして、厳粛なことばかり口にし、哲学をならべているが、そ[#「そ」に「*」の傍記]の一方かれら一人一人の眼の前では、労働者たちがひどい物を食い、一部屋に三十人四十人と、枕《まくら》もしないで寝ている。([#ここから割り注]訳注 *以下は上演当時の検閲のため削除されたので、一九〇四年の初版本に
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