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ワーリャは部屋を一わたり見まわし、ゆっくりと退場。ヤーシャ、および犬を連れたシャルロッタも退場。
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ロパーヒン では、春まで。さ、行こうじゃありませんか、皆さん。……ご機嫌《きげん》よう! ……(退場)

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ラネーフスカヤとガーエフ、ふたりだけ残る。ふたりはそれを待ち兼ねたように、たがいにぱっと頸《くび》に抱きつき、人に聞かれぬように声を忍んで、静かにむせび泣く。
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ガーエフ (身も世もあらず)ああ妹、可愛い妹……
ラネーフスカヤ ああ、わたしのいとしい、なつかしい、美しい庭! ……わたしの生活、わたしの青春、わたしの幸福、さようなら! ……さようなら! ……
アーニャの声 (浮き浮きと、招き寄せるような声で)ママ! ……
トロフィーモフの声 (浮き浮きと、感激をこめて)おーい! ……
ラネーフスカヤ お名残りにもう一度、壁を見て、窓をながめて……。亡《な》くなったお母さまは、この部屋を歩くのがお好き
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