そう……(間)

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ドアの向うで忍び笑い、ひそひそ声、やがてワーリャ登場。
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ワーリャ (長いこと、あれこれと荷物を調べる)おかしいわ、どうしても見つからない……
ロパーヒン 何がないんですか?
ワーリャ 自分でしまいこんだくせに、覚えがないんですの。(間)
ロパーヒン あなたはこれからどうされます、ワルワーラ([#ここから割り注]訳注 ワーリャの正式の名[#ここで割り注終わり])さん?
ワーリャ わたし? ラグーリンのところへ行きます。……あすこの家政を見ることになりましたの……女の家令とでもいうのかしら。
ロパーヒン ではヤーシネヴォ村ですね? 七十キロもありますよ。(間)いよいよこの家の生活もおしまいになりましたね。……
ワーリャ (荷物を見まわしながら)どこへ行ったんだろう、あれは……もしかすると、長持へ入れたのかもしれない。……ええ、この家の生活もおしまいですわ……もう二度と返っては来ませんわ……
ロパーヒン わたしはこれからすぐ、ハリコフへ発ちます……この汽車でね。どうも仕事が多く
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