にきらめかせてゐる。星形をした大きな池には、赤|蓮《はす》や青蓮が咲きほこり、熱帯魚がルビイ色の魚鱗《ぎょりん》をきらめかせてゐる。樹間には極楽鳥の翅《つばさ》がひるがへり、芝生には白|孔雀《くじゃく》が、尻尾《しっぽ》をひろげて歩いてゐる。
公園には博物館もあつた。陳列品の中で思ひがけなかつたのは、ミイラの夥《おびただ》しい蒐集《しゅうしゅう》であつた。非常に保存がよく、繃帯《ほうたい》まで原態をとどめてゐるのも少なくなかつた。その中で特に、赤膚媛《アカラヒメ》と標記された若い女性の一体と、片氏月姫《ガシグツキ》と標記された一体とが、著《いちじ》るしく僕の注目をひいた。前者は日本|奥羽《おうう》地方出土とあつて、豊かな乳房がありありと面影をとどめてゐる。後者は天山南路出土とあつて、下腹部の隆起がどうやら子宮の厳存を思はせた。
僕はまた、ほとんど毎晩のやうに、一流の劇場のボックスに納まつた。そこでは、盛装を凝らした紳士淑女の姿に接することができる。盛装とは言つても、もちろん男子服はあくまで無色透明、婦人服は淡青色透明のガラス織であることは変りはない。その代り様々のアクセッサリーの趣
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