のだからな」と言うと、わたしたち二人を引いて行けと下知しました。
 わたしたち一行は、三台の橇に分れて乗りました。先頭の橇には縛りあげられたアルカージイが勢子にかこまれて乗り、わたしも同様の厳重な見張りのもとに殿りの橇に乗り、まん中の橇には余った連中が乗ったのです。
 途で行きあう村びとたちは、脇へよけてくれました。婚礼かと思ったのかも知れません。

      ※[#ローマ数字14、187−6]

 帰りはあっと思うひまもないほどの早さでした。伯爵のお屋敷へ乗り入れた時には、アルカーシャを乗せた橇はもう影も形も見えず、わたしは早速いつもの席へ坐らされて、たてつづけの糾問ぜめでした。一体どれほどの時間アルカージイと二人っきりでいたか、というのです。
 わたしは誰に向っても、
「いいえ、ちっとも!」と返事をしました。
 さてそこで、わたしが背負って生まれたもの、それも可愛さ余って今では憎らしくて堪らぬ人と一緒に背負って生まれたその運命は、しょせん逃れるすべもなかったのです。で、わたしが小部屋へ帰ってきて、わが身の不運を泣いて泣いて泣きつくしてしまおうと、頭を枕に埋めたとたんに、床《ゆか》
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