もとに身を投げました。
「おたすけ下さい、火にあたらせて夕方まで匿まって下さい。」
 神父さんが、こう聞きます、――
「愛児《まなご》たちよ、あんたがたは一体どういうお人かな? 物盗りかな、それとも只の逐電なのかな?」
 アルカージイがそれに答えて、――
「わたしどもは何ひとつ物を盗った覚えはありません。ただカミョンスキイ伯爵の魔手から逃げだして参った者で、これからトルコ人部落のフルーシチュクへ行くつもりです。あすこにはわたしどもの仲間が大ぜい住んでおりますからね。追手に見つかる心配はありませんし、お金もたしかに自分のを持っています。一晩泊めて下されば金一枚をさし上げますし、婚礼させて下されば金三枚を奉納いたします。お差支えなくば婚礼させて頂きたいのですが、それが駄目なら、フルーシチュクへ行ってから一緒になります。」
 坊さんはそれを遮って、――
「いやいや、なんの差支えがあるものかな? わしがして上げましょう。わざわざあのフルーシチュクなどで式を挙げるには及ばんですわい。何もかも引っくるめて金五枚出しなされ――すればこの場で婚礼をさせて進ぜましょうて。」
 そこでアルカージイは坊さん
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