た一面に秘密の穴倉が掘ってあって、そこには人間がまるで熊みたいに鎖につながれて入れられていました。そのそばを通りかかると、時おり鎖の鳴る音や、足枷《あしかせ》をはめられた人たちの呻き声が、聞えることもありました。そのむごい有様が、どうぞしてお役人衆の耳にとどくか、お役人衆が嗅ぎつけるかしてくれればいいがと、みんな心の中で思ってはいたものの、第一そのお役人衆が、てんで口ばしを入れる気がないのですから、なんにもなりはしません。おまけにそのお仕置きが永の年月つづき、中には一生涯出してもらえぬ人もありました。ある人などは長いこと入れられている間に、ついこんな歌を作ったほどでしたよ。――
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蛇《くちなわ》めが這いよって 目の玉を吸いだすよ
さそりめが顔のうえに 毒を垂れながすよ
[#ここで字下げ終わり]
こんな小っぽけな歌の文句も、ひとり胸の中でつぶやいてみると、思わず身の毛がよだつのでした。
なかにはまた、ほんとの熊と一つ鎖につながれている連中もありました。ほんの七分か八分の違いで、熊の爪がその身にかからないだけの話だったのです。
ただ一人アルカージイ・イリイーチの
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