sskaja myslj[#「Russkaja myslj」は斜体] の一八九九年十二月号に発表された。脱稿はその年の十月だが、チェーホフとしては珍しくよほどの苦心のいった作であったと見え、雑誌発表の際にも校正を二度重ね、その後一九〇三年版の作品集に収めるに当っても相当はげしい斧鉞《ふえつ》を加えて、ようやく現在の形になったものである。それかあらぬかこの作品は、その手法の簡素さ、味わいの渋さ、ほとんど象徴的なまでの気分の深さ、更には暗鬱な地膚のうえに漂うそこはかとないほの明りなどによって、後期のチェーホフの芸術的特徴を遺憾なく発揮しており、彼の生涯を通じての一代表作たるを失わない出来ばえである。若きゴーリキイがこれを一読して、「リアリズムに最後のとどめをさすもの」と感嘆しているのもよく首肯できる事柄である。
一九四〇年夏
[#地から3字上げ]訳者
底本:「可愛い女・犬をつれた奥さん 他一編」岩波版ほるぷ図書館文庫、岩波書店
1975(昭和50)年9月1日第1刷発行
1976(昭和51)年4月1日第2刷発行
入力:蒋龍
校正:川山隆
2008年5月18日作成
青空文
前へ
次へ
全5ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
神西 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング