って、よろよろしている)
ドゥニャーシャ どう考えたらいいか、困ってしまいますわ。あの人、あたしを愛してますの、とても愛してますの!
アーニャ (自分の居間のドアをのぞきこみ、なつかしそうに)わたしの部屋、わたしの窓、まるで旅行なんかしなかったみたい。わたし、うちにいるのね! あした朝おきたら、すぐ庭へ出てみよう。……ほんとに、ちょっとでも寝られたらよかったのにねえ! 道中ずっと眠らずじまい、なんだかとても気にかかって。
ドゥニャーシャ 一昨日《いっさくじつ》、トロフィーモフさんがいらっしゃいました。
アーニャ (嬉しそうに)ペーチャが!
ドゥニャーシャ お風呂場《ふろば》で寝てらっしゃいますよ、あすこに陣どってしまってね。お邪魔になっちゃ悪いからな、ですって。(懐中時計を出して見て)あのかた、お起しするといいんですけど、ワルワーラさま([#ここから割り注]訳注 ワーリャの正式の名[#ここで割り注終わり])がいけないと仰《おっ》しゃるものですから。お前、あの人を起すんじゃないよ、って。

[#ここから2字下げ]
ワーリャ登場、バンドに鍵束《かぎたば》をさげている。
[#ここで字下げ終わ
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